本研究では、「レーザ積層造形法」と加工誘起変態による機能発現のための「塑性加工」を融合させた加工プロセスを提案し、MRIアーチファクトを抑制でき、かつ低弾性特性を示す生体用低磁性Zr合金の開発を行うことを目的としている。本研究ではレーザ積層造形法により低磁性Zr合金を造形した後、塑性加工により低弾性機能を発現することを目指している。今年度(H29年度)においては、レーザ積層造形法により作製したZr-Nb-Sn合金の機械的性質と加工誘起変態の有無について検討した。積層造形条件を変化させ、配向性の異なる直径6mm、高さ40mmの円柱状の積層造形体を作製し、引張試験片へ加工した。積層造形体の主要構成相はβ相であり微弱なω相とBCT構造を持つ長針状の形態を持つ相の存在が確認された。造形方向に対してβ(200)の結晶配向が見られる造形体と、配向が弱くランダム方位を有する造形体に対して引張試験を行った。どちらの造形体においても引張試験前後で構成相が変化し、引張試験後において試験前に存在していなかったhcp構造を有するα相が、母相とバーガースの方位関係を満たしながら形成していることが確認された。引張試験により塑性ひずみを与えて除荷した後、荷重を再負荷して塑性ひずみを与える繰り返し引張試験を行った結果、繰り返し数の増加の伴う弾性率の減少が認められ、結晶配向の有無により減少割合が異なった。すなわち弾性率の低減には、β相からα相への加工誘起変態が関与し、その変態の容易さには初期組織の違いが影響を与えていることが示唆された。以上より、低磁性を有するZr合金積層造形体に塑性加工を与えることにより低弾性化が可能であることを示した。
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