本研究では生体内埋入後に自発的に溶解するCa-Mg-Zn系溶解性複相合金の開発を目指した検討を行い,この結果,昨年度までの研究を通じ,我々が提案するモデルに近い島状組織を有する合金としてCa2Mg5Zn13(IM3)-Ca3MgxZn(15-x) (IM1)二相合金を見出した. 本年度の研究検討により本合金の溶解挙動は,これまでに明らかにした合金組成制御に加え,ほぼ同一組成・体積比率を有するIM3-IM1複相合金においても,組織形態(結晶粒径)により溶解挙動が大きく制御し得ることが新たに明らかとなった.今回着目した合金系においては,第二相の比較的速いアノード溶解挙動が合金の溶解特性に強い影響を及ぼし,この結果,組織の微細化による多量の粒界導入が,表面への均一な被膜形成を促進することで,溶解速度の低下をもたらす可能性が示唆された.こうした微細化による溶解速度の低下は圧粉焼結材においても確認され,粉末成形体における溶解性の低下が達成された.特に本年度の検討においては,適切な条件を選択することで,上述の金属間化合物複相バルク体だけでなく,これにさらに骨の主成分であるCa10(PO4)6(OH)2(HAp:アパタイト)を組み合わせた,金属/セラミックスバルク複相体の作製にも成功した.今回着目した粉末冶金法は極微細化を含めた任意の粒径への組織制御を可能とする有望な手法であるため,今後さらに研究の進捗が期待できる. 以上本研究により,複相合金の溶解挙動制御は,「各構成相の特性制御」,「構成相間の組織形態制御(組織微細化)」,「結晶方位(集合組織)制御」の三者を同時に適切に制御することで,高度に達成され得ることが明らかとなり,更にその挙動の浸漬時間依存性についても明らかにした.
|