本研究は、非晶質シリコン膜に対しフラッシュランプアニールを行うことで発現する“爆発的結晶化”によってガラス基板上に得られる、大粒径厚膜多結晶シリコンを薄膜太陽電池に利用する技術の確立を目的としたものである。フラッシュランプアニールは、キセノンランプからのパルス光を用いた瞬間熱処理法であり、ガラス、および非晶質シリコンの熱拡散長が数十ミクロンとなるミリ秒台の加熱時間のため、ガラス基板全体への熱損傷を抑制しつつ、ミクロンオーダーの膜厚の非晶質シリコン膜の結晶化が可能である。結晶化は、潜熱放出とその拡散により横方向に進行する、爆発的結晶化と呼ばれる機構で進行することを明らかにしており、特に、電子線蒸着により堆積した非晶質シリコン膜を前駆体に用いることで、液相エピタキシーが支配的な爆発的結晶化が発現する結果、横方向に数十ミクロン延伸した大粒径結晶粒からなる多結晶シリコン膜が得られることを、これまでの研究により確認している。 最終年度は、爆発的結晶化の結晶化機構制御と多結晶シリコン膜への亀裂抑止を目的に、意図的に凹凸を形成したガラス基板の使用を検討した。その結果、適切な程度の表面凹凸を有するガラス基板を使用することで、大結晶粒が形成される結晶化機構を維持したまま亀裂の低減が可能であることを見出した。また、裏面電極型太陽電池形成を前提とした試料構造に対するフラッシュランプアニールの利用可能性についても実証し、高効率多結晶シリコン薄膜太陽電池作製のための基盤技術を確立した。
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