(1) PtとAg修飾Pt(Ag/Pt)電極上でのglycolate(GC)とoxalate(OX)(炭素数2)とformate(FO)(炭素数1)のサイクリックボルタモグラム(CV)(30℃)においてGCの酸化電流は非常に小さかったが、Ag/Pt電極では大幅に増大し、AgはGC酸化活性を大きく改善することが分かった。OXとFOの存在下でのPtとAg/Pt電極のCVは非存在下とほぼ等しかったので、両分子ともPtとAg/Pt電極上ではほとんど酸化されなかったと考えられる。Pt電極上では両分子とも吸着しなかったのに対し、Ag/Pt電極ではPt表面上に非常に安定に吸着していることが示唆された。 (2) C-C結合の開裂が起こりうるglycerate(GR)とmesoxalate(MX)の酸化活性と生成物分布に関する知見を得るため、PtとAg/Pt電極を用いたGRあるいはMXを含むアルカリ水溶液の定電位電解(60℃)を行った結果、両分子ともAg/Pt電極の方がPt電極より同じ電解時間での酸化電気量が大きいことが分かった。 (3) GRの定電位電解では、Pt電極での主生成物はtartronate(TN)で、OXとFOも副生した。TN生成の電流効率(CE(TN))はOX生成のそれの約6倍であった。Ag/Pt電極でも生成物分布は同じであったが、CE(TN)はやや減少し、CE(OX)がやや増加した。以上の結果よりC-C結合の開裂が起こることは分かったが、TN、OX、FOのいずれもPtおよびAg/Pt電極上でほとんど酸化されなかったことから、これ以上のcarbonateへの完全酸化は難しいと予想される。 (4) MXの定電位電解では、Pt電極での主生成物はOXで、少量のFOが副生した。この結果よりC-C結合の開裂が起こっていると考えられる。OXとFO生成の電流効率の合計は約67%であったが、残りはOXとともに生成するcarbonateによると考えられる。
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