研究実績の概要 |
最終年度である平成29年度は、昨年度に引き続きヘマタイト(Fe2O3)焼結体を用いた実験を行った。基本条件の溶液(As(V)濃度50 g/L, Fe(II)濃度55.9 g/L)を用いて反応温度の影響の調査を行なったが、基本条件の95℃と比較すると、低温(50℃, 70℃)ではスコロダイト結晶の成長は遅い結果となった。しかし、50℃においても長時間(98h)の反応後には95℃(反応時間7h)と同程度にファセット状スコロダイト結晶が得られた。また、溶液pHの影響では、基本条件(pH=1.6)と比較すると、pH=0.9ではファセット状結晶が生成するが結晶成長は遅く、また、pH=0.6の場合には、明確なファセット状結晶は得られなかった。溶液Fe(II)濃度の影響に関しては、Fe(II)濃度25 g/Lの場合にも、基本条件(Fe(II)濃度55.9 g/L)と同様のファセット状結晶が生成した。しかし、ゲル状前駆体の量は基本条件と比較して少なく、また、Fe(II)濃度0 g/Lの場合には、スコロダイト結晶の生成は確認されなかった。As(V)濃度の影響に関しては、基本条件(As(V)濃度50 g/L)と比較するために、As(V)濃度25 g/Lでも実験を行ったが顕著な差異は確認されなかった。 さらに、ヘマタイト粉末添加法では溶液中のFe(II)の消費が無く、pHが低下しないため、廃液組成の調整が簡素であることから、昨年度作製した廃液循環(再利用)装置を用いて廃液の再利用実験を行った。実験は、温度90℃、初期As(V)濃度約50 g/L、初期Fe(II)濃度約55 g/Lの溶液を用いて行った。ヘマタイト粉末添加量はFe(III)として溶液に対して約38.9 g/Lである。実験では、第一反応後の廃液を第一反応の溶液と同様の組成に調整後、さらにヘマタイト粉末を第一反応と同様に添加して第二反応を行った。両反応とも溶液量は300 mL、反応時間は3hである。廃液を利用した第二反応でも、第一反応と同様に溶液から砒素が除去され、ファセット状スコロダイト結晶が合成されることが確認された。
|