研究実績の概要 |
Cu, Fe及びS品位の異なる銅精鉱について、所望のFe/SiO2(重量比)になるよう溶剤のSiO2を銅精鉱に混合し、酸化反応並びにスラグ/マット融体形成・相分離プロセスをホットサーモカップル(HTC)法を用いて調査した。Ar中で短時間 (約2秒間)酸化性ガスを吹き付け、銅精鉱の着火反応及びCu-Fe-S系マット融体、FeO-SiO2系スラグ融体の形成とマグネタイト (Fe3O4)固相生成の有無を実体顕微鏡にて観察し、急冷後試料をSEM-EDSで評価した。銅精鉱中のS成分の部分的な揮発とそれに続くSO2形成の酸化反応がトリガーとなって、≦1秒の短時間で1200℃以上の高温に到達し、その後に引き続いてCu-Fe-S系マット融体の生成とマット/スラグ融体相分離プロセスが進行することが明らかとなった。 銅乾式製錬副生成物の銅スラグを入手し、溶融後の冷却条件を制御して生成相、微細構造とAs, Pbの溶出特性を評価した。銅スラグ融体をAr雰囲気中で溶融後、低酸素分圧下でジルコニア製のふるいを通過させ、続いてカーボン製回転板上へ流し出し弾き飛ばすことで粒状の銅スラグを形成しかつ空冷にて室温まで冷却させた。得られた粒状スラグでは、マグネタイト相とファイヤライト相が生成し、AsとPbは、残存するAl2O3及びSiO2含有量の多い、アルミノケイ酸塩系非晶質相に濃縮された。結果として結晶化させた粒状の銅スラグ固化体では1 mol/Lの塩酸水溶液に対するAsとPbの溶出量が桁違いに低下し、環境省告示第46号試験(As, Pbの含有量試験)を満足した。 基礎データとして銅スラグ融体の高温での粘度特性を雰囲気制御下で測定する装置を自作し銅スラグ融体の粘度を測定した。 銅製錬プロセスで用いられるマグネシア・クロム質耐火物と銅スラグ融体の界面反応を調査し、同耐火物の耐腐食性を決定する因子を理解した。
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