研究実績の概要 |
本課題では,「革新的軟化溶融シミュレーター」と,本申請課題で構築する「高温融体物性その場測定システム」を組み合わせ,それらの知見をフィードバックして作成する「粒子法による 数値シミュレーションモデル」により,持続型低炭素製鉄を目指した高温プロセス内原料軟化融着挙動可視化技術を開発することを目的とする. 平成29年度は,各担当者により以下の点が明らかとなった. 九州大学の大野により,革新的軟化溶融シミュレーターとマイクロCT撮影を組み合わせた,窒素ガス流通条件下コークス充填層 内における試薬スラグの溶融挙動を評価が行われ,ガス最大圧損を示す時点において形成される通気路形状が黒鉛とコークスを 用いた際に異なり,コークス中灰分とスラグ相互作用が影響を与える可能性を示唆した. 東北大学の助永により,高炉内滴下帯で生成するスラグを対象とした粘度推算を試みた.既存のモデルにより得られた粘度データと実測値(文献データ)を比較すると,今回採用したモデルはおおよそ実測値よりも約30%程度高く見積もられる傾向が;観られ た.スラグの化学構造を反映させることによる,モデルの推算精度向上の可能性が見出された. 北海道大学の夏井により,高炉滴下帯を対象として,表面磨耗等を考慮したコークスベッドの非定常構造解析を新規に試みた. 3D-scanによって劣化原料の表面形状を数値的に再現し,力学シミュレーションに反映することができた.また,融体物性変化 の影響によるトリクルフロー特性について調査を行った.塩基度,Al2O3濃度などスラグ組成による影響について,流下速度, 液滴分散,ホールドアップの観点から各物理量の関係性を見出した. さらに各担当者間で綿密な議論を行い,研究者連携規模を9名へ拡大した,研究計画最終年度前年度の応募申請を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに各担当者により以下の点が明らかとなった. 九州大学の大野により,H27年度に窒素ガス流通条件下黒鉛粒充填 層内における試薬スラグの溶融挙動を評価が行われ,スラグの表面張力が充填層内のガス圧力損失挙動に及ぼす影響についての相関関 係が示唆された.H28年度には,ガス最大圧損を示す時点において形成される通気路の形状とガス圧力損失値についての相関関係が示唆された.H29年度はガス最大圧損を示す時点において形成される通気路形状が黒鉛とコークスを 用いた際に異なり,コークス中灰分とスラグ相互作用が影響を与える可能性を示唆した. 東北大学の助永により,H27年度に高炉系スラグの表面張力が大気中で測定され,表面張力の発現メカニズムを融体表面の構造モデルとともに提案された.H28年度には,スラグの表面張力に及ぼすガス組成の影響についての評価手法の再検討を行なわれ,静滴法または懸滴法が適当であることが明らかになった.H29年度には高炉内滴下帯で生成するスラグを対象とした粘度推算を試みた。既存データと実測値(文献データ)を比較すると、今回採用したモデルはおおよそ実測値よりも約30%程度高く見積もられる傾向が観られた。 北海道大学の夏井により,H27年度に離散要素法(RB-DEM) と弱圧縮性を導入し数値的に安定化したWC-MPSおよびWC-SPHのカップリングが行われた.H28年度には,コークス等製鉄原料の持つ複 雑な座標情報3Dデータを抽出し,DEMシミュレーションに供することで,高炉下部充填層の境界条件が得られた.さらに局所的な滞留 液滴量と粒子形状との関係性を見出された. H29年度には炉滴下帯を対象として、3D-scanによって劣化原料の表面形状を数値的に再現し、力学シミュレーションに反映することができた。 したがって概ね順調に遂行されていると考えられる.
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