研究実績の概要 |
平成29年度は,これまでの結果に基づき,低ファウリング性を有する膜および膜モジュールの開発,およびタンパク分画性能の評価を行った.基膜として中空糸状あるいは平膜状のポリエチレン製の精密ろ過膜を用い,膜面および細孔内部に低ファウリング性を有するポリマー(これまでに検討したカルボキシベタイン系ポリマーとノニオン系ポリマーをそれぞれ1種類ずつ)を修飾することで,低ファウリング膜の開発を行った.膜面修飾法については,これまで検討したプラズマグラフト重合法に加え,原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization, ATRP)法の検討も行った.ATRP法を用いて作製した低ファウリング膜は,プラズマグラフト重合法で作製した低ファウリング膜と比べて,グラフト鎖密度が高いと考えられる結果が得られ,昨年度まで問題となっていたグラフト鎖による膜抵抗の増大を抑制できる可能性が示された.また膜の一括膜面修飾法の検討,およびモジュール化手法の基礎検討も行い,膜面修飾用のラボ装置をスケールアップすることで,実用レベルの膜面積を有するモジュール作製の実現可能性を強く示唆する結果が得られた.開発した膜の低ファウリング性の評価も,これまで用いたBovine Serum Albumin(BSA)とデキストランに加えて,さらに多種のタンパクを用いて行い,タンパクの種類(分子量や等電点の違い)に依らず,高いファウリング防止性を有することが示された.さらに開発した低ファウリング膜のタンパクの分画分子量曲線を得ることに成功した.たとえば,重合量を0.033 mg cm-2から0.044 mg cm-2に変化することで,分画分子量を65 kDaから51 kDaに変化させることができた.
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