マイクロリアクタのための反応工学の体系化が喫緊の課題とされている。本研究はマイクロ触媒反応器についての反応工学の新展開のため、顕微分校法による総合的な反応の解析を目標として研究を継続している。本研究では、壁面にPt触媒を担持したマイクロリアクターの触媒反応の解析手段として顕微ラマン分光を提案している。反応が進行中の触媒表面をin-situ 解析し、中間吸着種の観察をすることで顕微ラマン分光の有効性を検討した。 シクロヘキサン脱水素反応が進行中に1600cm-1、1350cm-1に炭素質由来のピークが徐々に現れ始め、②窒素パージに切り替えるとこれらピークも確認できなくなった。また、シクロヘキサンの脱水素反応はπアリル種の構造を持った中間体を経由して起きることが知られている。1450cm-1付近にπアリル種に由来するピークが確認できることから、この反応機構を裏付けることが出来、顕微ラマン分光法が反応メカニズムの解析に適用できることが分かった。また、プロパンの脱水素反応においても中間体のπアリル種に由来するピークが観察された。 反応率が大きくなる高い反応温度で実験を行うと、炭素質由来のピークが大きくなり、中間種由来のピークが覆われてしまう。そこで炭素質析出抑制に効果的とされる助触媒としてスズを加え、Pt-Sn/Al2O3/SiO2/Siリアクターを作製し実験を行った。Pt-Sn/Al2O3/SiO2/Siリアクターを用いた時のスペクトルはPt/Al2O3/SiO2/Siリアクターを用いた時のスペクトルと比較して炭素質に由来するピークが小さいことが分かる。炭素質のピークが無ければ、スペクトル上の炭素質により隠れていたπアリル種などのピークが観察できることが分かった。
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