研究課題/領域番号 |
15H04180
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
陶 究 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 主任研究員 (60333845)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルカリ水電解 / 水素製造 / 高温高圧 / 電気化学マイクロセル |
研究実績の概要 |
本研究では、高温高圧場でのアルカリ水電解による次世代型水素製造プロセス開発のための基盤研究を実施する。水電解は高温、高圧、高アルカリ濃度ほど性能が向上するため、有効な水素製造法の一つと考えられている。一方、装置、電極、セパレーターの腐食や耐久性の問題から、安全面やコスト面を含めて装置作製上の課題が多く、実用化には至っていない。なお、商用での最高温度は90℃程度である。本研究では、次世代型水素製造プロセス実現のために耐熱、耐圧、耐食性に優れたマイクロ電極を含む新規な構造の電気化学マイクロセルを提案、開発するとともに、常温から400℃、常圧から50MPaにおけるアルカリ水電解を実施し、プロセス化に不可欠な電流電圧曲線や水素生成速度といった基盤データを蓄積し、提案するプロセスの有用性を例証することを目的としている。 今年度は、ナノ粒子充填構造を利用したマイクロ電極の作製方法について、粒径や種類の異なるナノ粒子を用いて最適な電極への粒子塗布・固定化方法について検討した。また、併せて、耐圧性、耐熱性、耐食性、絶縁性をより確実に維持できる電極作成方法についても検討した。その結果、耐食絶縁材であるアルミナやチタニア等のセラミックスを金属の機械加工と同程度の寸法公差(±0.03mm)で微細加工できることが分かった。実際に耐食絶縁部を作製し、シール性、絶縁性等の性能を確認した。また、電流-電圧データを計測する電気化学測定装置を導入し、基本となる計測システムを構築した。さらに、発生水素をオンラインで分析するためのガスクロマトグラフィーシステムの開発を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
耐圧性、耐熱性、耐食性、絶縁性を確実に維持できる電極作成のための耐食絶縁部の作製方法に関する指針を整理できた。また、高温高圧アルカリ水電解場で、電気化学測定装置を用いて電流-電圧データを計測する基本システムを予定通り構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者を1名加えて、以下の研究を推進する。 【マイクロ電極の作製方法の確立】セラミックスの微細加工により作製した耐食絶縁部を用いて、耐熱性、耐圧性、耐食性、絶縁性を確保したマイクロ電極の作製方法を確立する。特に、耐食絶縁部-電極細線間、耐食絶縁部-耐圧耐熱配管間のシールや設置・固定方法を重点的に検討する。また、必要に応じて、耐食絶縁部の構造を最適化する。 【高温高圧溶液供給および圧力制御システムの開発】水電解特性の圧力依存性を正確に把握するために、100MPa程度までの高圧条件での電解を想定し、高圧ポンプを購入するとともに圧力制御システムを構築する。また、本研究では、1系統で供給した溶液をセル内で均等分配する必要があるため、その流量制御システムも構築する。 【装置作製と水電解実験】開発する溶液供給部および圧力制御部に加え、溶液加熱部、溶液冷却部、温度・圧力の測定・制御部、電気化学測定部を含む電解装置を作製する。実際に電気化学セルを試作して組込み、高温高圧下でアルカリ水溶液の流通・電解試験を実施する。温度や電圧を操作因子として電流を測定するともに生成水素と酸素を分離し、定量するための一連のシステムを完成させる。また、電解現象の把握に重要となる電極間距離を精密に制御する方法についても検討する。
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