研究実績の概要 |
本研究では、12CaO7Al2O3(C12A7)エレクトライドの水素吸蔵放出能を利用し、金属ナノ粒子触媒と組み合わせることで水素化・脱水素触媒の開発を行うことを主な目的としているが、C12A7以外のエレクトライドや水素化物を開発することも重要な課題としている。本年度は、昨年度見いだした水素化物Ca2NHがRuに対する吸着能が極めて高く、Ruをナノ粒子状で高分散に担持できることを見いだした。この効果により、RuとCa2NHとの電子的相互作用も強められることで高いアンモニア合成活性を示すことを明らかにした。 また、LaScSi, LaCuSi, LaCoSi等の金属間化合物が、新たなエレクトライド材料として機能し、各種触媒反応に優れた活性を示すことを見いだした。LaScSiはRuを固定化することで、優れたアンモニア合成活性を示し、LaCoSiは、そのものでアンモニア合成活性を示す。また、既存のCo触媒よりも低い活性化エネルギーでアンモニア合成できることを見いだした。さらに、LaCuSiは、ニトロベンゼンの選択水素化などに優れた触媒性能を示すことを見いだした。いずれの場合も、LaからCu, Coに対して電子移動が生じ高い触媒活性が実現している。 Ca(NH2)2に少量のBaを添加した材料にRuを固定化した材料が、低温でのアンモニア合成に対し著しく高い性能を示すことを明らかにした。本材料は、反応中に自己組織的に担体がメソポーラス構造へと変化し、同時にRu-Baコアシェル構造が形成される。このような構造により優れた触媒性能を示すことが明らかとなった。Ca(NH2)2にRuを担持した触媒をアンモニア分解に用いると、平らで大きなRu粒子が形成された際に高いアンモニア分解活性を示すことを見いだした。この結果からアンモニア分解では、Ruの構造因子が触媒活性に大きな影響を与えることが分かった。
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