研究実績の概要 |
本申請研究では、「異常原子価(高酸化数)金属を構成元素にもつ、あるいは酸素分子の脱挿入が可能なセラミックス材料(主に酸化物)を合成し、これら材料を触媒あるいは担体として用いて酸素分子や基質の活性化を行い有害な副産物を生成しない有機基質の液相選択酸化プロセスの開発」を目的としている。本年度は、ナノペロブスカイト合成時のアモルファス前駆体生成の重要性に着目し、単純かつ効率的な新たな合成ルートを検討した。具体的には、アスパラギン酸と金属源に硝酸塩ではなく酢酸塩を用いることでpH調整を必要とせずアモルファス前駆体を合成でき、これら前駆体の焼成により高表面積なSrMnO3の合成に成功した。333 Kでの分子状酸素を酸化剤としたフルオレンからフルオレノンへの選択酸化反応に対する触媒活性を比較した。酸化反応は触媒非存在下では進行しなかった。触媒反応は活性種の生成などに起因する誘導期なく効率的に進行した。種々の触媒の中でも、アミノ酸法で合成したSrMnO3が最も高い触媒活性を示し、24 h 後のフルオレノン収率は96%に達した。フルオレンの酸素分子を酸化剤とした選択酸化反応に対してマンガン触媒を含む様々な固体触媒が報告されているが、高収率を得るために高い反応温度、酸素圧力、あるいは添加剤(ラジカル開始剤、強塩基など)を必要とする。一方、本反応温度は添加剤なしの1 気圧酸素のみを酸化剤とした触媒系の反応温度(368&ー443 K)と比較しても低く、本触媒系が温和な条件で反応を促進していることが明らかとなった。本触媒は不均一系触媒として機能し、再使用可能であった。本系は他の基質(キサンテン、ジフェニルメタン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン)の酸化反応にも適用可能であった。
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