研究課題/領域番号 |
15H04187
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺村 謙太郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80401131)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CO2光還元 / 赤外吸収スペクトル / Agナノ粒子 |
研究実績の概要 |
平成28年度はPhase 2:分光学的手法を用いた触媒表面とCO2との相互作用の解明(2-1. 赤外吸収分光法を用いたCO2の吸着状態の解明)を主に行った.赤外吸収スペクトルによる表面吸着種の検討により,CO2を導入するとmonodentateやbidentate carbonate種などの吸着CO2種が観察され,それらが光照射下でbidentate carbonateからmonodentate carbonate種へと変化し,最終的にはformate種が生成する様子を観察することに成功した.光照射を続けるとformate種は減少していくことから,この種が反応中間体と結論した.これらの検討から,Ga2O3上に吸着したcarbonate種が光照射によってformate種に変化し,この種が分解することによってCOが生成するメカニズムを提案した.さらに,Phase 3:「H2生成の阻害剤」および「活性点金属」の構造解析(3-1.電子顕微鏡によるAgナノ粒子の構造解析)に着手した.Agナノ粒子のサイズや形状に関して,CO2の転化率及びCOへの選択率の依存性を明らかにするために,ナノ粒子の構造解析の一環として透過型電子顕微鏡(TEM)による特性評価を行った.含浸法・光電着法・化学還元法・無電解めっき法などAgの修飾方法によってAgナノ粒子の形状や大きさが変化することが分かったが,それを制御する方法は現在のところ模索中である.また,この検討によって,反応後にAgが粗大化し,反応活性が低下することを明らかにした.一方で,当初予定をしていたPhase 2:分光学的手法を用いた触媒表面とCO2との相互作用の解明(2-2.昇温脱離法を用いた光触媒表面の塩基点の強度・量の同定)に関しては装置立ち上げの問題で着手できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に行うべきPhase 1の3つの検討事項において,「1-1.ZnGa2O4の合成条件の最適化」はほぼ終了している.「1-2.Agのサイズ・形状・添加方法の最適化」および「1-3.様々な種類の活性化金属の探索」については平成27年度に引き続き,平成28年度においても検討を行ったが,Agナノ粒子のサイズや形状の制御方法の確立に手間取っており,あまり進捗しているとは言えない.一方で,平成28年度以降に検討する予定であったPhase 2:分光学的手法を用いた触媒表面とCO2との相互作用の解明およびPhase 3:「H2生成の阻害剤」および「活性点金属」の構造解析については順調に進捗している.「2-1.赤外吸収分光法を用いたCO2 の吸着状態の解明」については,すでに得られた結果より反応メカニズムを提唱し,国際論文に採択されている.また,「3-1.電子顕微鏡によるAg ナノ粒子の構造解析」に関してはほぼルーティンに構造解析が可能な環境を構築している.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はPhase 2:分光学的手法を用いた触媒表面とCO2との相互作用の解明(2-2.昇温脱離法を用いた光触媒表面の塩基点の強度・量の同定)を中心に研究を推進していく予定である.これまでに我々は固体表面の塩基点がCO2の光還元に対する活性に及ぼす影響を報告してきた.これまでは定性的な議論に終始していたが,本検討において定量的な議論をしたいと考えている.すなわち,昇温脱離法を用いて触媒表面の塩基点の強度・量について定量化し,光触媒活性およびCOへの選択性との関係を明らかにする.さらに(2-1. 赤外吸収分光法を用いたCO2 の吸着状態の解明)においては,平成27,28年度に得られた結果をベースとして,電子源であるH2Oの存在下におけるCO2の吸着過程を明らかにしたいと考えている.一方で,これまでに進捗状況があまり芳しくないPhase 1の(1-2.Agのサイズ・形状・添加方法の最適化)に関しては,合成方法に再検討を行い,一方で(1-3.様々な種類の活性化金属の探索)に関しては電気化学的な検討を行う予定をしている.
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