研究課題/領域番号 |
15H04193
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
仁宮 一章 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (10379125)
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研究分担者 |
高橋 憲司 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (00216714)
生越 友樹 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (00447682)
黒田 浩介 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (10748891)
政井 英司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (20272867)
山岸 忠明 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90220251)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオマスリファイナリー / イオン液体 / セルロース / リグニン / 樹脂 |
研究実績の概要 |
2-a) リグニンモノマーからの熱硬化性樹脂の開発 前年度1-b)糖化残渣リグニンのモノマー化により得られたリグニンモノマー(バニリン、シリンガアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド等の混合物)を原料物質として、エポキシ樹脂合成のためのモノマーへと変換した。具体的には、Sphingobium sp. SYK-6 株由来のvanillin dehydrogenase 遺伝子(ligV) 発現Pseudomonas putida PpY1100 株( P.putida PpY1100/ligV 株)を作成し、バニリン酸、シリンガ酸、p-ヒドロキシ安息香酸の混合物へと変換した。または、ligVに加えてp-hydroxy benzoatehydroxylase 遺伝子(PobA) syringate O-demethylase 遺伝子(DesA) 、vanillate/3MGA O-demethylase (ligM) を発現させたP. putida PpY1100 株( P. putida PpY1100/ligV/PobA/DesA/LigM 株)を作成し、プロトカテク酸とガリック酸の混合物へと変換した。ここで、リグニンモノマーの存在により宿主P. putida PpY1100 株内で強力に発現が誘導されるプロモータをトランスクリプトーム解析により探索し、上述の系へ適用した。培養液中のリグニンモノマー原料、中間・最終物質について、GC/MS 分析により変換率を評価した。得られた最終物質のOH 基をターゲットとしてエピクロロヒドリンを用いてエポキシ樹脂モノマーを合成し、プレポリマー化・硬化反応を行う。得られたエポキシモノマーや樹脂については、NMR やIR による分光分析、DSC やTG による熱分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖化残渣リグニンのモノマー化により得られたリグニンモノマー(バニリン、シリンガアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド等の混合物)を原料物質として、エポキシ樹脂合成のためのモノマーへと変換することができたから。具体的には、組み換え微生物発酵により、バニリン酸、シリンガ酸、p-ヒドロキシ安息香酸の混合物へと変換した。または、プロトカテク酸とガリック酸の混合物へと変換することができたから。得られた最終物質のOH 基をターゲットとしてエピクロロヒドリンを用いてエポキシ樹脂モノマーを合成し、プレポリマー化・硬化反応を行うことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
2-b) リグニンオリゴマーからの超高分子量・構造化材料の開発 前年度までの1-a)の糖化前処理・分画操作により得られたリグニンオリゴマー(分子量10^3程度)を原料として、超高分子量樹脂ならびに構造化樹脂の合成を行う。フェノールオリゴマーを原料とした場合を参考に行う。リグニンオリゴマー単独で高分子合成が進まない場合は、構造の明確なフェノールオリゴマーとの共重合を行う。超高分子量樹脂合成は、強酸性条件にて行う。IPN構造・ラダー構造を有する樹脂合成は、リグニンオリゴマーとビニル系モノマーの同時ネットワークポリマー化を行う。得られた超高分子量樹脂ならびに構造化樹脂の評価には、DSCやTGによる熱分析ならびに引っ張り試験を行う。 2-c) リグニン残渣と無機材料からの複合化材料の開発 前年度までの1-b)の糖化残渣リグニンの酸化分解反応の後に得られる“リグニン残渣(分子量10^5)"を原料として、まず、イオン液体中での修飾反応によってリグニン主骨格であるベンゼン環への官能基の導入を行い、その後、無機材料(ガラス材料、金属材料、炭素材料、粘土)との複合化を行う。高分子量フェノール樹脂や市販リグニンを原料としたこれまでの成果を参考に行う。ガラス材料との複合化には、シリカゲル表面のシラノール基と相互作用するようなアミド基、ウレタン基をリグニン残渣に導入する。金属材料との複合化には、金属に配位できるチオール基の導入、もしくはリグニンが従来有しているメチロール基を利用する。炭素材料との複合化には、炭素材料とリグニン残渣との芳香環相互作用を増大させるために、多核芳香族分子をリグニン残渣に導入する。粘土との複合化には、アニオン性の粘土層と相互作用することが可能な、アンモニウム塩のようなカチオン性部位をリグニン残渣に導入する。得られたリグニン残渣ベースの複合化材料の機能性評価には、DSCやTGによる熱分析ならびに引っ張り試験を行う。
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