研究実績の概要 |
ウイルス感染症を予防するための有効かつ安全な次世代ワクチンとして,ウイルス様粒子の利用が期待されている.本研究では,インフルエンザウイルス様粒子ワクチンを迅速に高生産するための新たな技術基盤の構築を検討する.このため本研究では,A型のインフルエンザウイルスの構造タンパク質であるヘマグルチニンHAおよびマトリックスタンパク質M1の遺伝子を共発現する組換え昆虫細胞を作製し,両タンパク質と脂質二重層から成るウイルス様粒子の連続分泌生産系の確立を目指す.本年度は,まず,インフルエンザAウイルスのHAおよびM1のcDNAを,GenBankに公開されている塩基配列に基づきそれぞれ全合成した.この際,昆虫細胞における発現に向けてコドンの最適化をおこなった.合成した遺伝子を,異なる薬剤耐性遺伝子を有する2種類の高発現型プラスミドベクター pIHAblaおよびpIHAneo (Yamaji et al.: Biochem. Eng. J., 41, 203-209 (2008)) にクローニングした.作製したHAおよびM1の発現ベクターをTrichoplusia ni由来のBTI-TN-5B1-4 (High Five) にコトランスフェクションし,一過性発現を試みた.培養上清を抗インフルエンザAウイルスHA H1抗体および抗M1抗体を用いるウェスタンブロット法で分析したところ,HAおよびM1に相当する分子量付近にそれぞれ特異的なバンドを検出することができた.このことから,発現ベクターを導入した昆虫細胞はHAおよびM1を分泌発現することがわかった.
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