研究課題/領域番号 |
15H04197
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
永田 晴紀 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40281787)
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研究分担者 |
戸谷 剛 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00301937)
脇田 督司 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80451441)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハイブリッドロケット / ロケット / ロケットノズル / ノズル浸食 / 航空宇宙工学 / 燃焼 |
研究実績の概要 |
本研究は、ハイブリッドロケットで重要な課題として認識されていながら研究が進んでいないノズル浸食を、主に実験的に解明することを目的とする。本年度は、当研究室でこれまで蓄積してきた独自技術を活用し、ノズルスロート面積および燃焼ガスの組成の各時間履歴を取得する手法を確立した。主な研究成果は以下の通りである。 (1) 従来の再現法の発展: 当研究室でこれまで開発されてきた再現法では、燃焼室圧力、酸化剤流量、および推力の各履歴から、燃料流量の履歴を算出する。この手法を発展させて、ノズルスロート面積の履歴も同時に算出する手法の構築に成功した。 (2) 地上燃焼実験によるデータ蓄積:構築された手法を燃焼実験に適用した結果、0.1 mm未満の精度でノズルスロート半径を算出することに成功した。燃料の形状を変えて広範囲な燃料-酸化剤比(O/F)条件下で燃焼実験を行い、浸食速度に及ぼすO/Fの影響を実験的に示した。浸食速度はやや酸化剤過剰側で最大となり、数値計算での予測と定性的に一致した。 (3) 共同研究グループの構築:ノズル侵食の数値モデルを開発している、ローマ大学のD. Bianchiらのグループに共同研究の提案を行い、快諾を得た。2015年7月の国際学会の機会に最初の打合せを行い、その後は電子メールにより意見交換を継続している。 (4) ノズル侵食を抑制する材料および表面加工技術:本年度はノズル材料として、長繊維強化セラミクス、シリコンカーバイト(SiC)でコーティングしたグラファイト、炭化ケイ素セラミクス、ジルコニア、炭化タングステン、窒化ケイ素セラミクス、およびアルミナを用いた。燃焼実験の結果、炭化タングステンは浸食がグラファイトの1/5、SiCコーティングでは浸食がゼロとなることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「地上燃焼実験によるデータ蓄積」では、新たに構築されたノズルスロート面積履歴取得手法の有効性を実験的に確認するところまでが本年度の目標であったが、O/F条件を変えた3回の燃焼実験を実施することができ、ノズル浸食速度に及ぼすO/Fの影響を実験的に示すことが出来た。ハイブリッドロケットにおいてこのような実験データが得られたのは、世界的にも本成果が初めてである。 「ノズル侵食を抑制する材料および表面加工技術」では、当初計画では長繊維強化セラミクスとSiCでコーティングしたグラファイトの2つを調査することを目標としていたが、更に5種類の材料を調査することが出来、炭化タングステンという有望な材料を新たに見出すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初計画を前倒しで実施しながら順調に進展している。次年度は運用性に優れた小型モータを新たに整備し、100回程度の燃焼実験によりデータの蓄積を進める計画である。並行してローマ大学のD. Bianchiと情報交換を継続し、ノズルスロート浸食機構の解明を目指した研究の具体的手法を詰める。
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