研究課題
本研究の主目的は、膜面構造を有する宇宙機の低軌道上での挙動をISSから放出する超小型衛星EGG(以下EGG)を利用して実測し、その結果を参照データとして、事前&事後解析を実施し、膜面衛星の運動特性、ダイナミクス、軌道崩壊現象を明らかにすることである。H27年度に、EGGの開発を完了させ、H28~H29年度にかけて、低軌道上での運用を行い、柔軟エアロシェルの展開に成功し、各種フライトデータを取得した。H29年度は、EGGの運用で得られたフライトデータの解析、及び、それを参照にし、事前解析との比較や事後の解析により、実際の軌道上での現象の理解を行った。まず、GPSにより時々刻々取得したEGGの位置情報から、軌道の変化を調べた。その結果、エアロシェル展開前後で、軌道の変化率が明らかに変化しており、軽量の膜面構造体の抵抗力により宇宙機の軌道が変化することを確認し、そして、その時の抵抗係数を推算した。また、柔軟エアロシェルの画像から、展開時の柔軟エアロシェルの形状を再現し、事後解析により、その推算された抵抗係数の検証も進んでいる。次に、慣性センサ、光センサ、及び、ファラデーカップ型進行方向検出センサ等により、柔軟エアロシェル展開前後の姿勢運動を推定し、そのダイナミクスの理解を進めた。さらには、大気圏突入時の空力加熱データも取得できており、数値流体解析により、その空力加熱環境を推定した。柔軟構造を有する宇宙機の大気圏突入時フライトデータは大変貴重であり、希薄気体中での柔軟物の運動の解明に役立つと同時に、新しい大気圏突入機の開発に有用なデータとなる。これらのフライトデータは、すべてイリジウム衛星通信を利用したテレメトリシステムにより取得された。この地上局を必要としないこのテレメトリシステムは、今後の衛星開発の敷居を下げ、低軌道衛星の利用価値や自由度を高めていくものとして期待されている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
超小型衛星EGGにおける成果が認められて、「展開型エアロシェル実験超小型衛星(EGG) チーム」として、2017年度日本機械学会宇宙工学部門宇宙賞を受賞した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
日本航空宇宙学会誌
巻: 65 ページ: 333-340
10.14822/kjsass.65.11_333