研究課題/領域番号 |
15H04207
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 太裕 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00344482)
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研究分担者 |
島 弘幸 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (40312392)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 生物形態模倣 / 座屈変形 |
研究実績の概要 |
本研究はナノ技術および生物化学的知見を積極的に導入することにより、既存の概念にとらわれない卓越した多重機能を有する構造材料、構造システムの提案を行うことを大きな目的とするものである。具体的には「カーボンナノチューブ」に代表されるナノスケール炭素繊維の形状変形性能と、それに伴う電子状態変化を積極利用した新しい構造システムや、生物が長年の進化の過程で獲得した力学的に最適な形態の模倣技術を活かした構造設計技術の新規提案を行う。初年度である平成27年度は以下の研究を実施し、目的達成に向けた新しい知見を得た。 ・カーボンナノチューブの種々の外力作用に対する変形挙動を追跡する解析コードの整備と、それを用いて欠陥を有する層数の少ない(1-3層程度の)カーボンナノチューブに生じる特異な変形挙動を見出した。これは静水圧作用時に欠陥部分が突出し、外圧除荷後も塑性変形が残るというものであり、第2年度に詳細な検証を行い、国内外に向け査読論文として結果を投稿する予定である。 ・竹の節構造に着目し、竹自身の曲げ抵抗メカニズムと節間長の関係を合理的に定量化する構造モデルを新たに提案した。これにより竹が外力に対し曲げモーメントが大きくなる根本付近で節間長や肉厚、半径の最適な組み合わせにより曲げに抵抗する一方、曲げモーメントが小さくなる先端付近に向かうにつれ、曲げ抵抗性を弱めるという合理的な構造諸元をとっていることを構造力学的に実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ技術に関わる研究については、当初予想した現象を解析により再現することに成功し、それらの結果を初年度に国内外での学会発表の形で研究公表を行うことができた。また生物科学に関わる研究では、竹の節と曲げ抵抗メカニズムに関わる部分で非常に興味深い、新しい知見を得ることができた。この成果はPhysical Review E誌に投稿、掲載され、さらに注目論文としてEditors' suggestionに選出された。このように初年度から目的達成に向け着実に成果を挙げているため、自己点検により上記進捗状況区分にあると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度におおむね計画通りの成果を得ることができたため、次年度以降積極的に外部に論文として成果公表をしていくとともに、当初予定の解析、調査をさらに継続して進めていくこととする。また本申請課題を基課題とする科研費(国際共同研究強化)に採択となり、海外での共同研究を実施することが可能となった。この共同研究を本申請課題と有機的に融合することで、研究の内容を充実させる予定である。
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