本研究はナノ技術および生物化学的知見を積極的に導入することにより、既存の概念にとらわれない卓越した多重機能を有する構造材料、構造システムの提案を行うことを大きな目的とするものである。具体的には「カーボンナノチューブ」に代表されるナノスケール炭素繊維の形状変形性能と、それに伴う電子状態変化を積極利用した新しい構造システムや、生物が長年の進化の過程で獲得した力学的に最適な形態の模倣技術を活かした構造設計技術の新規提案を行う。最終年度である平成29年度は以下の研究を実施し、新しい知見を得た。 ・カーボンナノチューブの欠陥に着目し、円周方向に欠陥が複数配置された場合の断面座屈強度について昨年度までに開発した分子動力学解析手法により検証を行った。その結果、欠陥を周期的に配置した場合に、断面座屈強度を大きく増加させることを新たに見出した。 ・竹の断面内組織構造(維管束分布)に着目し、昨年度までに見出した曲げ剛性に関する断面内組織構造の最適配列が、曲げ応力に対しても最適配列であることを理論的に示した。また竹の節と組織配列の影響を考慮した、曲げ変形に対する断面偏平化メカニズムについて検討を行い、これらの影響を全て含めた新たな断面偏平抑制効果を示す無次元パラメータを理論的に導出した。 ・竹の断面内組織配列が非常に巧みに構造特性を最適性していることから、この事実にヒントを得た、新しい複合構造技術の開発に着手した。
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