研究課題/領域番号 |
15H04209
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 英晶 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (10361502)
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研究分担者 |
井川 寛隆 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (10358690)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 荷重同定 / 変形同定 / 光ファイバセンサ / 分布計測 / FBG / 逆解析 / 構造ヘルスモニタリング / ひずみ |
研究実績の概要 |
風力発電用風車の大型化にともない、風車翼に加わる荷重と変形が与える風車翼自身および風車全体の健全性への影響が増加していく。本研究では、過大な荷重・変形を抑える高度な翼ピッチ制御に必要な情報として、翼の荷重分布および全体変形に着目し、分布型光ファイバセンサから得られるひずみ情報から逆解析手法などを用いて荷重および変形を精度よくかつ高速に推定することを目標としている。 当該年度(平成28年度)は、分布型光ファイバセンサによる高速ひずみ分布測定技術の実証(課題1)として、正確度の評価法について前年度からの課題が残っていたため、試験条件を厳密に分析し、約1 kHzのサンプリングレートで動作する計測システムがそれぞれ約10マイクロストレインと12マイクロストレインの確度と精度を持つことが分かった。 光ファイバセンサのひずみ情報から構造変形を算出する手法の開発(課題2)では、光ファイバセンサで計測されたひずみ分布情報をもとに平板の3次元的な変形を精度よく同定できることを示した。前年度までは曲げ変形のみ同定であったが、今年度はねじりを含む平板の変形同定に成功した。特に光ファイバセンサの配置の工夫および新しい変形同定手法(i-FEM)の導入を試み、画期的な成果が得られたと考えている。数値解析による、翼分布荷重逆推定手法の確立(課題3)、複合材料製翼構造体を用いた曳航水槽試験による、分布荷重同定システムの実証(課題4)については、初年度に十分な成果が得られたため、2年目はとりまとめに注力した。なお、予算の制約もあり、2年目に複合材料製翼構造体を用いた曳航水槽試験による、分布荷重同定システムの実証(課題4)で挙げていた新たな模型の設計は実施していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に実施を予定した以下の4つの課題について、ほぼ予定通りに実施することができた。 分布型光ファイバセンサによる高速ひずみ分布測定技術の実証(課題1)では、目標より大幅に応答性の良い計測システムを利用し、改良した評価手法により、世界最高水準の性能を持つことを示した。光ファイバのひずみ情報から構造変形を算出する手法の開発(課題2)では、曲げ変形に加え、ねじり、曲げを含む3次元的な変形推定の実証に成功した。いくつかの成果に関して、外部発表の実施・予定がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の要素技術は大きく「高速ひずみ分布測定技術の開発」と「荷重逆推定手法の確立」に分けられる。当該年度(平成27年度、平成28年度)は、当該研究代表者が全体を取りまとめながら、2つの要素技術開発に関して研究分担者および連携研究者、研究協力者らと分担・連携・協力して研究を進めることができた。今後も、研究遂行のための良好な体制を維持しつつ、「高速ひずみ分布技術の開発」に関連して、国際的な標準化活動の基盤を担うことも意識して、海外研究者らとの情報交換を進めていく。また本研究の成果・プロセスが、研究の効率化・高度化に重要な役割を果たしている当該研究代表者所属機関の設備の発展的維持管理に貢献するよう計画とフィードバックを意識する。「高速ひずみ分布測定技術の開発」では各種材料試験機、「荷重逆推定手法の確立」では曳航水槽設備、他各種計測機器が成果の独自性と新規性に大きく寄与しているためである。 最終年度は、「変動荷重下での荷重推定の精度評価」と課題5について検討することとなっている。一方、平成28年度の成果で、3次元的な変形同定が極めてよい結果を与えたため、最終年度は、おもな検討課題を「変動荷重下での変形同定の精度評価」に変更し、課題5でもおもに変形情報の効果・有効活用に関して検討を実施する。ただし、当初の予定通り荷重についても検討を実施する予定であり、研究目的にある「高度な翼ピッチ制御機構」に対するより有効な手法への取り組みであると言える。
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