昨年度に引き続き、漁具にセンサーを取り付けて漁獲と同時に水質を計測する方法を伊勢湾の小型底びき網漁船に実装してデータを取得した。取得したデータを解析することによって、マアナゴやシャコのCPUE(単位努力あたりの漁獲量)と水温・溶存酸素等の環境因子の関係を調べた。一方で、漁獲データは曳網毎にその合計値しか得られないことや、漁業者が操業しながら手書きで記録していることによる不確実性等の課題が明らかになり、その取得方法についての検討を行った。魚類動態モ デルについては、観測データを得ている伊勢湾の小型底びき網漁の複数の対象魚種のモデルを実装するとともに、実際の漁業データによる検証を可能にするため に漁具能率などをモデル化した漁業モデルと結合し、シミュレーションを実施した。 また、低次生態系から高次生態系までを統合的に扱いかつ人為的インパクトの影響を考慮できるEnd-to-End モデルについては、流動・低次生態系を扱う3次元の生態系モデルと、食物網全体を扱うEcopath、Ecosimをリンクして、物理場ー低次生態系ー高次生態系を統合的にシミュレーションするモデルを構築した。構築したモデルを用いて東シナ海や東京湾の生態系シミュレーションを行い、漁業の影響(Top-down)的な生態系への影響)や、栄養塩負荷の影響(Bottom-up)的な生態系への影響) 等を調べた。さらに、海洋エネルギーの一つである海洋温度差発電からの放流水による影響を評価することを目的とした生態系モデルを構築した。
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