研究実績の概要 |
船舶ディーゼルからの排ガスには,多環芳香族炭化水素類(PAHs)が含まれている. 本研究は, 熱交換器(HE)付電気集装置(ESP)によるPAHsの除去を目的とし,ディーゼル排ガス中PAHsの測定, PAHs濃度に対するHEとESPの影響を検討した.また,プラズマ処理部(PPU)によるイオン誘発核生成の確認を行った.実験装置は,ディーゼルエンジン, PPU,HE, ESPによって構成した. ディーゼルエンジンには燃料としてA重油を使用した. HEには温度約20 ℃の水道水を冷媒として使用し, 排ガスのを30 ℃に冷却した. PPUは内径58 mmの金属円筒と直径0.26 mmのタングステン製ワイヤーによる同軸円筒電極構造とし、電極長は70~230 mm、印加電圧はDC+10 kVとしコロナ放電を発生させた。ESPは高圧印加用電極に鋸状の刃のついた平板, 接地電極に刃のない平板を使用した平行平板電極構造とした.負極性高電圧0 ~ -9.5 kVを印加することで, コロナ放電を発生させた.PAHsの除去性能については,PPUは停止し,HEとESPのみで実験を行った.その結果,排ガスをHEで30 ℃に冷却することで, ガス状PAHs濃度が減少した. 排ガス中には, PAHsの他, ガス状の可溶性有機成分SOFが含まれている. SOFは冷却されることで, 凝縮を起し粒子化することが分かっている. PAHsは, SOFに溶解しやすい性質を持っているため, ガス状PAHsの濃度が低下したものと考えられる.また,ESPに電圧を印加することで,ガス状,粒子状PAHsともに濃度が低下し除去された.イオン誘発核生成の確認では,PPUのみを運転し実験を行った.その結果,粒径50 nm以上の粒子濃度が減少し、50 nm以下の粒子濃度が増加した.この結果から,イオン誘発核生成の発生が示唆された.
|