船舶ディーゼル機関からの排ガスには NOx ,SOx などの有害ガス成分や可溶性有機成分(SOF)などの粒子状物質(PM)のほか、毒性の高い多環芳香族炭化水素類(PAHs)がガス状または粒子状で存在する。本研究の目的は、このPAHsとPMを高効率に除去することである。 本目的を達成するために、まず熱交換器と電気集塵装置を組み合わせた効果を検討した。温度約160oCの排ガスを熱交換器で冷却することによって、ガス状PAHs濃度が減少し粒子状PAHs濃度が増加した。また、PAHsを成分毎に計測した結果では、検出されたほとんどのPAHsで、ガス状の濃度が減少して粒子状が増加していた。これはで熱交換器によってガス状のSOFが、排ガス中のPMを核として凝縮し粒子化され、そしてガス状PAHsを吸収したものと実験結果から示唆された。さらに、電気集塵装置を通過することによって、検出された全ての粒子状PAHs濃度は減少し、ほとんどのガス状PAHs濃度も削減された。全PAHs濃度では、粒子状が89%、ガス状も88%除去することに成功した。 さらなる除去性能の向上を目指し、プラズマ処理部の開発を行った。プラズマ処理部では、イオン誘発核生成を利用して超微粒子を無数に生成することを狙った。微粒子が生成されることによって、熱交換器での凝縮効果が向上すると考えた。プラズマ処理部を最適化するため、微粒子生成に対する電圧極性、電圧値、電極長の影響を検討した。その結果、プラズマ処理部でコロナ放電を発生させることによって、15nmから25nmの粒子濃度を増加させることに成功した。この効果は、負極性で電圧値が高く、電極長が短い方が高いことが明らかになった。
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