研究課題/領域番号 |
15H04223
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
藤井 光 秋田大学, 国際資源学部, 教授 (80332526)
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研究分担者 |
内田 洋平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 福島再生可能エネルギー研究所, 研究グループ長 (90356577)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地中熱利用 / 省エネルギー / 都市インフラ / 地中熱交換器 |
研究実績の概要 |
「地下駅の路盤下のHGHEの挙動解析と数値モデリング」平成25年に小田急電鉄世田谷代田駅において,開削工法で掘り抜いた箱形トンネル下床版にコイル型水平熱交換器を敷設する地中熱利用システムが設置され,現在までホームの冷暖房運転が継続されている。本研究項目では,運転データを分析して本システムエネルギー効率を通常の地盤に設置されたHGHEと比較し,同システムの有効性を検討した。また,地盤温度の経年変化についての分析を行い,システム効率の持続性についても長期間にわたり検討した。さらに,トンネル周辺の地盤物性データとHGHE設置データに基づいてHGHEおよび周辺地盤の温度挙動を再現する数値シミュレーションモデルを地下水・熱輸送シミュレータを用いて構築し,妥当性をシステム運転データを用いて検証した。 「建物下に設置したHGHEの挙動解析と数値モデリング」宮城県栗原市に位置する企業では,建物基礎コンクリート内にポリエチレン製パイプをコイル状に埋設した空調システムの運転を継続している。本研究項目では,運転開始より収集されている運転データの分析により,床下地盤の熱源としての有効性,システムのエネルギー効率持続性を検討し,さらに浅部地盤の熱・地下水移動を再現する数値モデルを作成し,実測データとのヒストリーマッチングにより妥当性を検証した。 「コイル式HGHEの最適設計のための室内実験」秋田大学で所有する模擬地下水層を用いて,ループ間隔,幅,隣接する溝との間隔,循環流速などのHGHE設計諸元に関する検討を行った。実験では内径8㎜のパイプ(実規模では26㎜)のパイプを砂層に埋設し,ヒーターで50W程度の熱負荷を与えながら熱媒体(水)を3時間循環して,パイプ出入口温度,流速,砂層内温度を計測した。最適な設計の評価基準は熱媒体の温度増加率とし,温度増加速度が小さい設計を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内試験,数値解析ともに当初の予定をおおむね達成した。ただし,予定していた新国立競技場におけるHGHEシステムについては同施設の設計の見直しによる工期の大幅遅れにより,着手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
「都市インフラに設置したHGHEの設計に関する感度計算」前年度に構築・検証したトンネル内および建物下式HGHEシステムに適用可能な数値モデルを用いて,HGHEの設計に関する種々の感度計算を行う。設置場所としては,地下鉄に設置する鉄道・道路,地下街などの地下空間壁,住宅,ビルなどの建物下を対象とする。感度計算では埋設深度,ループ間隔,コイルピッチ・巻径,グラウト材の熱伝導率などを様々に変化させて,熱交換効率を比較する。また,前述のように,コイル式熱交換器のデザインはパイプ材料・継手などの初期コストに大きく影響するため,検討ではパイプ費用を含む初期コストと一定期間(ヒートポンプの耐用年数の15年間)のエネルギーコストの和を最小化することを目指すLCA分析を用いる。 また,数値モデルを用いた長期シミュレーションでは,日本の都市部においては都市排熱により地中への排熱が採熱と比較して2倍程度多く,熱収支が不均衡になることが多い現象を念頭に,システムの長期運転における持続性評価を目指した期間30年程度の長期シミュレーションを行い,地盤温度変化やシステム挙動の経年変化を予測・評価する。 「コイル式HGHEの最適設計のための室内実験」前年に開始したHGHEの室内実験を継続するとともに,降雨がHGHEの挙動に与える影響を検討するために,模擬地下水層の土壌水分を変化させて熱交換試験を行い,熱交換性能と土壌水分量の相関について詳細に検討する。さらに,同実験装置において一定流量の水を水平方向に流動させ,浅部地盤に地下水流れがある場合における,地下水の熱移流効果がHGHEに対する熱交換性能の改善効果についても実験的に検討する。
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