本研究は、熱水変質鉱物や炭酸塩鉱物などの識別・同定に有効な可視~短波長赤外域のリモートセンシング・データと、ケイ酸塩岩等の識別に有効な熱赤外域のリモートセンシング・データを統合して処理し、効率的な地質マッピングを行える手法を開発することにより、広域的な地質調査や鉱床探査等に有効な鉱物・岩石マッピング法として確立することを目的としている。可視~短波長赤外域~熱赤外域の空間分解能が異なるスペクトル解析結果を判読しやすい1枚のカラー画像として提供するため、スペクトル情報から得られる鉱物の種類を色相(H)、鉱物の相対量を彩度(S)、ディジタル地形データ(DEM)から得られる地形情報を明度(V)に割り当ててHSVモデルにより統合する方法を開発した。 可視~短波長赤外域では酸化鉄鉱物、粘土鉱物、炭酸塩鉱物などが、本研究による識別・マッピングの対象である。熱水変質帯では、中心から周囲に向かって異なる粘土鉱物が同心円状の累帯構造を形成することがあるが、本研究で開発したスペクトル指標により、これらの鉱物を異なる色相の漸移的なパターンで表現することができる。また炭酸塩鉱物についても、短波長赤外域での吸収波長の違いから、石灰岩とドロマイトの識別・マッピングを行う方法を提案した。緑レン石・緑泥石などの鉱物を炭酸塩鉱物から識別するためのアルゴリズムも開発した。熱赤外域では、ケイ酸塩岩の分光放射率パターンを利用して、ケイ酸塩岩のシリカ含有量とシリカの形態(石英かアモルファスか)を識別・マッピングできる指標を開発した。これらの指標を、HSV表色系による統合法を用いて地形情報と統合することにより、1枚のカラー画像上に表現することが可能となった。この方法で作成したカラー画像は、地質学的な解釈がし易く、地下資源探査や地質マッピングに活用できるものと期待される。
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