研究課題/領域番号 |
15H04226
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 澄彦 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30273478)
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研究分担者 |
松岡 俊文 京都大学, インフラシステムマネジメント研究拠点ユニット, 研究員 (10303851)
Liang Yunfeng 東京大学, 人工物工学研究センター, 特任准教授 (70565522)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 資源開発工学 / セルロースナノファイバー / 石油増進回収技術 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究でCNF懸濁液のEOR効果が確認できたものの,CNF懸濁液の耐塩性および圧入性が低いことが判明した。そこで,平成28年度は紫外線照射およびセルロースの分解酵素(エンドグルカナーゼに分類されるセルラーゼ酵素)を用いてCNFの短繊維化することによりCNF懸濁液の圧入性を改善することを試みた。また,CNFの短繊維化の評価は粘度測定と透過型電子顕微鏡(TEM)の観察画像解析により実施した。さらに,短繊維化したCNF懸濁液を貯留岩の空隙と同等のメッシュサイズのフィルターを用いて圧入性の改善の確認をおこなった。 その結果,70時間の紫外線照射でCNF懸濁液の粘度が元の25%程度まで低下するもののCNFの繊維長分布には顕著な変化がないこと,375時間照射したものはCNFの非晶領域の間隔と一致する100~150 nmまで短繊維化することが確認できた。また,エンドグルカナーゼに分類されるセルラーゼ酵素を用いた場合も,反応時間を長くするにしたがってCNF懸濁液の粘度が低下し,TEM画像でもCNFの短繊維化が確認できた。得られた短繊維の長さはCNFの非晶領域の間隔におよそ一致していたことから,今回用いたエンドグルカナーゼに分類されるセルラーゼ酵素により非晶部が選択的に分解されたと考えられる。この結果は,既存研究の知見とも整合している。以上より,紫外線照射およびセルラーゼ酵素による反応で柔軟性を持ったCNFを得ることができた。しかし,フィルター試験の結果,フィルター表面へのCNFの貼り付きが発生し,CNFの短繊維化だけでは圧入性の改善に至らないことがわかった。したがって,CNF懸濁液の圧入性を改善するための新たな方法を検討する必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
紫外線照射およびセルラーゼ酵素によって短繊維化したCNF懸濁液を用いて,貯留層コアに対する圧入性評価,塩およびpH に対する耐久性評価,貯留層コアに対するモビリティーコントロールを目的としたポリマー攻法実験とプロファイルモディフィケーションを目的とした止水実験を貯留層条件(120℃、10MPa 程度の高温高圧下)で実施する予定であった。しかしながら,空隙構造が簡単なフィルターを使用した試験でCNF懸濁液の圧入性の改善が確認できなかったことから,上記の試験を見送り,圧入性を改善するための方法を検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,石油貯留岩の空隙を十分に通過できると考えられるCNFを内包した直径が1ミクロン以下のエマルジョンを調整し,CNFどうしの絡み合いを防止することで圧入性の改善を試みる。そのために,界面活性剤と塩濃度を変化させた様々な条件でCNFを内包する直径が1ミクロン以下のエマルジョンの調整を行う。そのエマルションの調整に成功した場合,次に,フィルター試験を実施して圧入性の改善を確認し,貯留層の温度圧力条件でコア流動実験を実施する。また,CNFを内包するエマルジョンの適用条件を評価するため,その粘度特性,耐塩性,耐熱性なども調べる。最後に,本研究のまとめとして本研究で得られた結果からCNFの環境調和型EORへの適用性の評価を行う。 なお,CNFを内包する直径が1ミクロン以下のエマルジョンの調整ができなかった場合やフィルター試験でCNFの圧入性の改善が確認できなかった場合は,CNF懸濁液を石油増進回収用流体に用いることは不可能と判断し,逸泥防止剤等その圧入性の低さを活かしたCNFの使用法を提案する。
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