研究課題/領域番号 |
15H04230
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松浦 秀明 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50238961)
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研究分担者 |
片山 一成 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90380708)
大塚 哲平 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (80315118)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トリチウム / 高温ガス炉 / Li装荷用ロッド / ジルコニウム / アルミナ / 水素吸収 / 同位体効果 / 酸素 |
研究実績の概要 |
核融合研究を進めていく上で、核融合原型炉の初期装荷用トリチウムの調達法を明確にしておくことは重要である。申請者等は、「高温ガス炉を用いたトリチウム生産法」を提案し、炉心物理の観点からその有効性を示してきた。炉心へのLi装荷法や、これに関する炉の運転方法は、トリチウム生産性能を大きく左右する。申請者等は、引き続く研究で、「ロッド状Li装荷法」を提示し、実験データに基づく拡散計算と中性子輸送計算によりその有効性を数値的に示している。 本研究では、将来の照射試験、ガス炉を用いた実証試験を視野に入れ、Liロッドの模擬試験体を製作し、トリチウム生産・封じ込めの観点から、その有効性を確認し、さらにその性能改善をはかることを目的とした。 本研究で提案するLi装荷用ロッドは、アルミナ層とジルコニウム層からなる多層被覆によりトリチウムを閉じ込めることを想定しており、ジルコニウム層にはトリチウム吸収による圧力低下効果が期待されている。平成27年度は、水素吸収実験装置を製作し、ジルコニウム粉末に対する軽水素および重水素吸収速度を評価した。重水素吸収速度は、軽水素吸収速度よりも小さく、同位体効果があることが観測された。得られた結果を用いて、トリチウム透過挙動をシミュレーションしたところ、ジルコニウムの存在によりトリチウム閉じ込め性能が向上することが示された。 提案されているLi装荷用ロッド模擬体では、ジルコニウム層がLi酸化物から発生したトリチウムを吸蔵し、外部へのトリチウム透過防止の役割を果たす。この際、ジルコニウムは極めて酸素ポテンシャルが低いので、酸化物から酸素を取り込むことが予想された。トリチウムの吸蔵能に及ぼす溶解酸素の影響を調べた。平成27年度は、ジルコニウム中の酸素溶解濃度が最大20at%まで達すると、水素溶解度が1/4~1/5に減少することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、(1)Zr水素同位体透過に関する実験、(2)酸化物(LiAlO2、Al2O3)とジルコニウム(Zr)との共存性の確認を当初の計画として掲げ、また、次年度以降のLi装荷用ロッド模擬試験体を用いた実験(実験装置の作成)の準備を行うことを掲げていた。上述の通り、(1)については、ジルコニウム粉末に対する軽水素および重水素吸収速度を評価し、ジルコニウムの存在によりトリチウム閉じ込め性能が向上することを示している。また(2)についても、トリチウムの吸蔵能に及ぼす溶解酸素の影響を調べ、ジルコニウム中の酸素溶解濃度が最大20at%まで達すると、水素溶解度が1/4~1/5に減少することを示しており、当初の目的に沿って順調に進展していると言える。さらに、平成28年度以降のLi装荷用ロッド模擬試験体の制作についても、おおよそ必要な物品を揃え、順調に進んでいるため、このように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は、Al2O3とZrから構成されるLi装荷用ロッド模擬試験体を実際に製作し、軽水素及び重水素を用いた、トリチウム流出に対する予備実験を開始する。同時に、ジルコニウム中の水素吸蔵・放出挙動、および内部の水素拡散挙動に及ぼす溶解酸素の影響を調べる予定である。又、これまで実験で得られた、Al2O3の透過係数、及び過去に示されたZrの水素溶解量と水素の圧力の関係を用いてLi照射試験体を設計する。設計に際しては、高温工学試験炉(HTTR)の照射試験用ブロックを用いた試験、他の軽水減速熱中性子照射環境等を想定し、炉内へのトリチウム流出を現行の値以下に抑えつつ、これまで計算で求めてきた、トリチウム生産量・流出量の妥当性を十分確認可能な試験方法を検討し、その方法に適した試験体を提示する。
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