研究課題/領域番号 |
15H04231
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
出射 浩 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70260049)
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研究分担者 |
久保 伸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80170025)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 球状トカマク / 電子サイクロトロン加熱 / 非誘導プラズマ電流立ち上げ |
研究実績の概要 |
これまで、8.56GHz クライストロン管運転と28 GHz ジャイロトロン管運転を同一電源で行っており、同時入射実験が不可能であったため、入射アンテナも併用するハイブリッドランチャーシステムであった。新たに8.56 GHz クライストロン電源を整備したため、同時入射が可能となり、新たなランチャーシステムを開発した。今年度、予定されていた高電力入射(これまでの2倍)は、当初、マイターベンド型偏波器でのアーキングで実施できなかった。繰り返し、アーキングの原因を特定し、対策を施したが、マーターベンド型偏波器で構造上、避けられない問題が原因の一つと判断し、新たに準光学偏波器システムの設計・検討を始め、実機を開発した。開発された新たな準光学偏波器を伝送路に設置し、新規設置したダミーロードを用いたエージング作業を経て、非誘導プラズマ電流立ち上げ実験を開始した。アーキング問題を克服し、強集束した高電力入射を行うことができ、電子サイクロトロン波を用いたプラズマ電流立ち上げで世界最高電流値となる86 kA を高電力入射で達成した。 光線追跡コードによる加熱・吸収評価を始めた。加熱シナリオである第二高調波Xモード入射加熱で、電流荷体としして(温度)60 keV の高速電子が電子密度の3%存在すると仮定すると、最大50 % の一回通過吸収が見込めれた。実験で得られている「立ち上げ電流の入射偏波変化による一回通過吸収依存」が定性的に説明された。今回の強集束ビームを用いた高電力入射では、これまでより1桁高い電子密度が達成されている。バルク電子温度は、共鳴層での密度がカットオフを超えるあたりで減少し、立ち上がった電流は70 kA を超えたあたりで突発的に減少することが観測された。今後、入射角・入射偏波面の詳細掃引で、一回通過の加熱・吸収を変化させ、加熱・吸収、電流立ち上げ・減少機構の解明を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強集束ビームを用いた高電力入射を行い、電子サイクロトロン波を用いたプラズマ電流立ち上げを行い、世界最高の立ち上げ電流値となる86 kA を達成した。今回の強集束した高電力入射では、これまで実験より1桁高い電子密度が達成されており、大きな進展があった。加熱・吸収解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
加熱・吸収解析で高速電子による十分な一回通過吸収が見込まれることが示されており、一回通過吸収の立ち上げプラズマ電流への寄与を実験的に明らかにするを目指す。一回吸収は、加熱シナリオである第二高調波に有効なXモード偏波をどの割合で入射するかで制御することできる。加熱・吸収の観点からの実験・解析から踏み込んで、駆動電流実験・解析を行う上では、入射角が重要となる。プラズマ中波動の固有Xモードの偏波面は、入射角で変化する。一回通過吸収のプラズマ電流立ち上げへの影響は、入射角・偏波面制御実験で明らかにすることができ、詳細な入射角・偏波面のパラメータを掃引した実験を行う予定である。加熱・吸収解析は、多重光線追跡評価へと拡張し、さらに駆動電流解析へとつなげる。
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