これまでに局所電子サイクロトロン加熱・電流駆動(ECHCD)を可能にする新28 GHz ランチャーシステムを設計・製作して、低電力試験でその性能を確認し、QUEST 球状トカマク装置に実装した。QUEST 装置内でも低電力試験を実施し、良好なビーム集束性、ビーム入射角制御性を確認した。8.56 GHz アンテナシステムとの共用アンテナから新・独立28 GHz アンテナへの変更に伴い、28 GHz の伝送系も変更された。新たな伝送系では、設置されている偏波器で制御された偏波面から伝送路で変化して入射偏波面が決まるため、QUEST 装置内の低電力試験で偏波面を確認した。局所ECHCD 実験を実現する偏波面制御、入射角制御が集束ビームで行えることを実機で確認した。これまではいずれの制御も十分でない中、斜め入射設置で86 kA(世界最高値) のプラズマ電流立ち上げに成功していたが、今回、細部制御により93 kA (世界最高更新値)の電流立ち上げに成功した。 高効率電流立ち上げ・駆動につき、理論的解析を進めた。光線追跡解析で、斜め入射時にこれまで解析されていた第二高調波共鳴に加え、第三・第四高調波共鳴でも高速電子による十分な吸収があることを明らかにした。電流駆動の観点では、吸収があってもアップシフト・ダウンシフト共鳴で駆動効果が相殺されてしまう。第4・第3・第2と電流駆動に有利なアップシフト共鳴が連続的に続き、高効率電流駆動が実現できる可能性を解析的に評価した。 理論解析から、磁場に垂直入射時は電流荷体である高速電子よりもバルク電子を加熱することが可能であることを明らかとにし、垂直入射実験を行った。垂直入射では電子温度 200 eV、電子密度 5 x 10^18 m^-3(遮断密度近傍)のプラズマを0.2 秒程度、20-30 kA プラズマとして維持することに成功した。
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