研究課題/領域番号 |
15H04232
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
畑山 明聖 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10245607)
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研究分担者 |
宮本 賢治 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (00532996)
林 伸彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部, グループリーダー(定常) (10354573)
星野 一生 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部, 研究員(定常) (50513222)
深野 あづさ 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (90259838)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマ物理 / 核融合周辺プラズマ / ダイバータ / 中性粒子 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、核融合周辺プラズマを対象として、新しい運動論的数値シミュレーションモデルの構築を目的とする。とくに、ELM(Edge Localized Mode)による熱パルスに対するデタッチメントプラズマの動的応答の解析が可能となる新しい数値シミュレーションモデルの構築を目指す。その特徴は、①水素イオン、電子の運動量・エネルギー緩和過程の理解に加えて、②非平衡・非定常プラズマ中における水素原子・分子の衝突・輻射および輸送過程の理解、③不純物をも考慮した新しい多種粒子系核融合周辺プラズマの統合数値シミュレーションモデルの構築を目指す点にある。 以上の目的に対して、昨年度と同様、1)プラズマ輸送モデルの高度化、2)中性粒子輸送モデルの高度化を継続するとともに、これら二つのモデルを0次元モデルとして統合化することに成功した。15に及ぶ水素分子振動励起準位を考慮した分子活性化再結合(MAR)など、数百種にも及ぶ複雑なプラズマ-中性粒子反応過程を考慮した上でデッタチメントプラズマの解析が可能となった。核融合実験装置GAMMA10、CERN Linac4用など様々な水素負イオン源プラズマにおける実験結果と比較することにより、その妥当性検証を進めた。その結果、比較的高い電子温度(平均エネルギー)、低い電子密度の元でMARによるデッタチメントが支配的になるなど、実験と近い傾向を得た。これらの知見は、今年度1次元運動論的輸送モデルによるELMのシミュレーションを進めるにあたり有益な基盤となる。また、不純物輸送モデルについても高度化を進めた。不純物輸送に重要な摩擦力、熱力の運動論的モデルを背景イオンエネルギー分布の非平衡性を考慮した上で不純物輸送コード(IMPGYRO)に実装し、国際熱核融合実験炉(ITER)の不純物輸送予測解析を行うなど、今後の不純物輸送モデル統合化の基盤整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標「核融合周辺プラズマを対象とした新しい運動論的数値シミュレーションモデルの構築を目的とする。特に、ELM(Edge localized Mode)による熱パルスに対するデタッチメントプラズマの動的応答の解析が可能となる新しい数値シミュレーションモデルの構築」に向けて、昨年度、当初計画の第一ステップを終了し、今年度は第二ステップを推進した。体積再結合反応のPICモデルへの組み込みにやや課題を残し、更なる高度化が必要となるものの、最終年度に向けて計画は概ね順調に進展している。また、個々の構成モデルの妥当性検証に向けて、水素負イオン源装置、直線型核融合プラズマ実験装置GAMMA10における実験との比較も、連携研究機関(CERN、筑波大学など)の協力のもと、国際的な規模で精力的に進めることができた。日常的なメイル、TV会議による情報交換は、もちろん、多数の研究集会及び研究作業会を行い、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST),核融合科学研究所(NIFS)などの研究分担者、研究協力者との議論、情報交換を行い、広く国内の研究者の協力の下で、本研究課題を推進してきた。また、不純物輸送解析では、国際熱核融合実験炉(ITER)タングステン・ダイバータグループのリーダー(R.Pitts博士)を招聘し、ITERの開発現状についての講演、さらに、共同研究のための打合を行った。ITERにおいても、ELMが最重要課題の一つであり、我々の開発してきた運動論的不純物輸送コード(IMPGYRO)の重要性を互いに再確認するとともに、IMPGYROとITER機構の開発したプラズマ-中性粒子輸送コード(SOLPS-ITER)の統合化を進め、次年度、ITERのELM解析に適用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように計画は、概ね順調に推移していると考えられる。今後も、申請書の計画に従い、ELM(Edge Localized Mode)による熱パルスに対するデタッチメントプラズマの動的応答の解析が可能となる新しい数値シミュレーションモデルの構築を目指す。特に、今年度は、計画の最終年度であり、1)従来、我々が非平衡水素プラズマを対象として、開発してきた運動論的プラズマ輸送モデルおよび中性粒子輸送モデルの高度化・統合化を完了するとともに、2)上述の水素以外の不純物種をも含む多種粒子系へのモデルの拡張・統合化に着手する。そのために、昨年度までと同様、炉心プラズマ周辺部のモデル化、個体壁との相互作用モデル化、原子・分子データ整備の観点で、専門家の分担・協力を仰ぐ。また、初年度から開発してきた振動励起分子を含む中性粒子衝突輻射(CR)モデルのさらなる妥当性検証のため、欧州原子核機構(CERN)などの水素負イオン源プラズマ装置における実験との比較を継続する。また、統合モデルの妥当性検証として直線型核融合実験装置GAMMA10の実験研究者との連携によるモデル妥当性検証をさらに精力的に進める。以上のような実験との比較により、モデルの課題抽出、そのモデル改良へのフィードバックを可能な限り実施する。また、上述のITER機構との連携によるSOLPS-ITER-IMPGYOシミュレーション、及び、PIC-MCC(Particle IN Cell- Monte Carlo Collision) モデルとのベンチマークテストなども予定する。以上により、本研究の目標であるデッタチメントプラズマのELMに対する応答特性の理解を進めるととともに、その予測精度向上に寄与し、ITERなど将来の核融合炉の設計・開発に寄与する。また、その成果を最終報告書としてまとめる。
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