研究課題
本研究では、核融合炉に必須となる強磁場下での水素とヘリウムの同時大量排気を、連続かつ少ない三重水素貯留量で可能とする革新的な真空排気装置「超音速ジェットポンプ(Supersonic Jet Pump, SJP)」の実験研究を行う。SJPとは、10 K程度に冷却した心棒に排気する水素で生成した超音速ジェットを吹き付けて心棒表面に水素を凝固させ、これをカッターで常温の排気部に押し出して気化し、排気するという仕組みの装置である。固体水素膜生成面積を拡大するため、超音速ジェット吹き出し口は多段とする。研究開始当初は三段とする予定であったが、装置がコンパクトに設計できたことでスペースに余裕が生じたため、より高い排気能力が得られるように四段目を追加することとした。平成28年度はSJPの二段目から四段目部分を設計し、これらを製作した。一段目と同様に、他の段でも超音速ジェット吹き出し口のスリット幅調整が複数の極薄スペーサにより行えるようにし、超音速ジェット生成用ガスを各段の上方へと通すため、それぞれ多孔を設けた。真空容器及びガス導入部についても整備を行い、これを完了した。製作した各機器を真空容器内で組み立て、冷凍機コールドヘッドに固定した。カッター部の駆動機構について、マグネットカップリングを用いること、手動で回転駆動することなどを検討した。平成28年度後半になり、諸般の事情によって、実験室をこれまでの場所から他の場所へと移動する必要が生じたため、SJP本体や真空容器、真空排気ポンプなど実験機器の移設作業を実施した。この移設作業及び移設先での電気工事等は平成29年度早々には完了し、実験を再開できる見込みである。本研究に関連して、平成28年度には国内学会1件、国際学会2件の発表を行った。
3: やや遅れている
SJP本体、真空容器、及びガス導入部等で構成される実験装置については、カッター部を除き、ほぼ完成した。カッター部についても、マグネットカップリングを採用し、手動で回転駆動するなどの検討を進めた。平成28年度後半には、実験室を移動する必要が生じたため、実験機器の移設作業を主として行った。この移設作業及び移設先での電気工事等は平成29年度早々には完了し、実験を再開できる見込みである。再開後は、真空排気試験、冷凍機試験運転、ガス導入試験を経て、系統的な実験を行う計画であるが、夏頃までに実験を再開できれば、平成29年度11月に予定されている学会などでこれらの成果を発表することは十分可能である。
平成29年度前半は、実験機器の移設及び電気工事を可及的速やかに完了するとともに、カッター部を設計・製作する。実験再開後は、真空排気試験、冷凍機試験運転、ガス導入試験を行った後、カッター部無しでの実験を行う。ロータリーポンプによる粗引き真空排気を行っている状態で、SJP内の低温心棒を冷却し、SJP容器内部にガスを導入する。導入ガス量と真空容器内ガス圧力、及びロータリーポンプの排気速度から、低温心棒表面に吸着されているガス量を定量評価する。排気対象のガスとして、実験の第一段階では空気を、第二段階ではアルゴンを、最終段階では水素を用いる。平成29年度後半にはカッター部を導入し、低温心棒に吸着したガスをカッターで除去することによる排気速度への影響を調べる。これら実験の成果について、平成29年11月末に予定されているPlasma Conference 2017などで発表する。
すべて 2016
すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)