研究課題/領域番号 |
15H04236
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
増崎 貴 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80280593)
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研究分担者 |
小林 政弘 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30399307)
田中 宏彦 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60609981)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統計的磁気面 / プラズマ輸送 / ダイバータ / 分光計測 / 3次元プラズマ輸送流体コード / EMC3-EIRENE |
研究実績の概要 |
核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDにおいて、統計的磁気面領域からダイバータへ至る熱・粒子輸送機構の理解を目指した研究を進めている。その一環として、プラズマ生成中に見られるダイバータの熱・粒子負荷分布の変化の原因を調べるため、EMC3-EIRENEコードによる計算機シミュレーションを行った。同コードではこれまで、磁力線に垂直方向の拡散係数や熱伝達係数を空間的に一定の値としてきたが、より現実的な計算を行うため、拡散係数、熱伝達係数に、プラズマ温度依存性、磁場強度依存性を与えることができるようにした。具体的には、温度に対しては正の依存性、磁場強度に対しては負の依存性を与えた。例えば温度の場合は、統計的磁気面領域の平均プラズマ温度と局所的な温度の比について、指数と係数を変化して、ダイバータ熱。粒子負荷分布への影響を調べた。係数は、実験で得られた統計的磁気面領域のプラズマ温度分布が計算で再現できるように決めた。結果として、拡散係数・熱伝達係数の温度依存性、磁場強度依存性を考慮しても、実験で観測されている負荷分布の変化を再現することはできなかった。この結果は、研究分担者が指導する博士研究員により論文として投稿されている。LHDでは、平成28年度末から実験が開始されている。本研究課題採択後の最初の実験である。平成27年度から、本研究予算で整備を進めたダイバータプラズマ分光システムが稼働し、分光データが得られている。本システムの前のシステムにおいて、平成27年度までに得られていた分光データについて解析を行い、ダイバータプラズマが接触状態から非接触状態へ至る過程におけるプラズマパラメータの空間変化、プラズマの流れ分布などが得られている。これらの解析は、今後本システムのデータ解析と合わせ、ダイバータの熱・粒子負荷分布を決めるプラズマ輸送の理解に必須である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核融合科学研究所のLHD装置の実験予定の変更などのため、期待した分光計測データの取得が遅れているが、平成28年度末から開始された実験において、分光システムが稼働し、現在順調にデータを取得している。ダイバータ板に設置している静電プローブアレイのデータも順調に得られており、本研究課題の目的のためのデータセットが整いつつある。また平成28年度は、本研究課題において最も重要な研究の一つであるEMC3-EIRENEコードの改良を実施し、磁力線に垂直方向の輸送に温度、磁場強度依存性を持たせたシミュレーションができるようになった。この成果を論文として投稿するところまで進めることができた。 以上より、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究課題の最終年度となる。平成28年度までの研究では、シミュレーションによるダイバータ熱・粒子負荷分布変化の再現については、シミュレーションコードの中の、磁力線垂直方向の輸送係数に温度依存性、磁場強度依存性をもたせたが、再現はできなかった。この点については、平成29年8月まで実施されるLHD実験において、本研究課題で整備した分光計測、既存の他の計測機器を用いたデータ収集をさらに進め、物理機構の解明を進める。 平成28年度に得られた成果、また現在得られつつあるデータを解析した結果を、国際会議などで公表し、関係する研究者との議論を進める。平成27年末から運転を開始した、ドイツのヘリカル型装置W7-Xにおける周辺プラズマ輸送研究状況などの調査を行うための出張も行う。
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