平成29年度研究により、管壁の導電性・厚みが高い場合には有意な信号を測定することができなかったことを鑑み、3次元有限要素法解析による磁気シールドの再設計、及び現象詳細評価のための電磁場詳細分布評価を改めて実施した。その結果、内部流体の導電率が海水程度に高い場合でも、内部流体分布に起因する有意な信号変化を得るために必要な高周波帯においては、たとえ磁気シールドを用いたとしても、管壁を透過させて管内部に電磁場を誘導することは困難であることが明らかとなった。得られた知見に基づき、昨年度までに構築した測定システム及び解析プログラムの見直しを行った結果、対象をこれまで検討していた炭素鋼管から樹脂系複合材料配管へと変更することとなった。 続いて平成29年度までに開発した解析プログラムをさらに発展させ、線形性の仮定のもとで、順問題解析により得られた対象の電磁場より測定信号の変化と対象内部に設定した微小領域内の電磁気的変化を関連付ける行列の計算、及び当該行列の正則化による逆問題解析により測定信号から対象内部の内部導電率3次元分布を評価するためのプログラムを整備した。当該プログラムを用い、適切な測定条件検討のための、対象の物性値、形状、及び測定条件が内部導電率推定精度に及ぼす影響評価解析を行った。 最終的にこれまでの研究で設計・製作したセンサー及び測定システムの高出力化を行った後、二相流流動試験ループを用いた技術検証試験を実施した。既存手法に比べて上述の数値解析により見いだされた測定条件ではより信号が明瞭化されることは確認されたものの、信号対ノイズ比は依然として小さく、明瞭な断面再構成画像には至ることができなかった。
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