研究課題/領域番号 |
15H04240
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 秀一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90262047)
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研究分担者 |
宮部 昌文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (20354863)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レーザー / 原子・イオン / 同位体 |
研究実績の概要 |
奇数安定同位体43Ca+を対象としたレーザー冷却遷移波長の確立と効率的冷却 43Ca+は、最終ターゲットとしている41Ca+と同じ核スピンI=7/2 を有している。43Ca+の超微細構造はすでに明らかにされているが、このレーザー冷却遷移を閉じるために必要な光源をAOMによる基本光の変調により実現し、基本光とのビートの測定によりその変調量を評価した。実際に43Ca+をイオントラップ中にローディングし、効率的な冷却により個別イオンの観測に成功し、超微細構造の計測を行った。これにより最終ターゲット41Ca+の捕獲冷却が十分可能であることが示唆された。
レーザー共鳴イオン化による同位体選別的イオン導入 中性Ca原子の多段階共鳴イオン化スキームはさまざま存在するが、基底状態の4s2 1S0から4s4p 1P1に対応する423 nm、4s4p 1P1から4s4d 1D2に対応する732 nmのスキームが半導体レーザーで対応することが可能である。これらを用いて少数同位体の同位体シフトの測定を行い、同位体選択性を実験的に検討した。1段目の423 nmだけでなく、2 段目の732nmの共鳴を利用することで1段の共鳴だけを利用する場合より非常に高い同位体選択性で少数同位体を励起可能であることを示し、微量同位体のイオン化に非常に有用であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的に交流電場を利用した線形四重極で実現される質量電荷比による制御と、レーザー波長制御を用いて単一イオンレベルでの極微量同位体分光・分析を行うことを目標としているが、現在までに個別イオンの観測、最終ターゲットである41Ca+と同じ核スピンを持つ43Ca+の捕獲・効率的な冷却に成功しており、またイオン化においても2段の共鳴を使うことで微量同位体のイオン化を行うことに成功している。これに加え、理論計算のグループに依頼した超微細構造係数の結果や既往の研究から同位体シフトを推算し数値解析により算出したほかの同位体との相対的スペクトルの結果を組み合わせ、41Ca+のレーザー冷却を行うことが十分可能であることが示された。 よって最終目標までには、さらなる高感度化および、極微量の同位体のイオン化を行うための新たなイオン化スキームの検討・単一イオンの生成導入・観測を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
イオントラップを用いた単一イオンの観測 極微量同位体分光・分析を行うため、その極微量の同位体を高い同位体選択性によりイオン化した後、イオントラップ・レーザー冷却を用いて結晶化させ観測する予定である。そのためには単一レベルでのイオンから発生する蛍光観測が必要である。新たに開発した軸方向から観測が可能な小型イオントラップにおいて、波長・光強度を制御したレーザー光により単一原子レベルでのイオン化を行い、イオントラップ中に導入し捕獲する。また軸方向からの観測の利点を活かしてクーロン結晶の生成およびその観測を行う。さらにレーザー光源の周波数安定化や観測系の高感度化などにより、より高い精度で同位体をイオン化し、トラップ中に導入した上で捕獲観測を目指す。
レーザー共鳴イオン化に用いる新たな光源の開発 中性Ca原子の多段階共鳴イオン化スキームはさまざま存在するが、これまで基底状態の4s2 1S0から4s4p 1P1に対応する423 nm、4s4p 1P1から4s4d 1D2に対応する732 nmのスキームを実現するための半導体レーザーの設計・製作を行ってきた。ここからイオン化まではもう1光子必要となり、これまでは連続状態へのイオン化とすれば、同じ光源の非共鳴光子を利用していたことになるが、さらに4s4d 1D2から4s39f 1F3に対応する837 nmの半導体レーザーを用いることで、更に中性Ca原子を同位体選択的に励起・イオン化することが可能となる。そこで、新たに837 nm の光源の開発およびその性能評価、また実際に同位体を選択的に励起・イオン化しその同位体選択性を評価する。
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