研究課題/領域番号 |
15H04244
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
荒河 一渡 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30294367)
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研究分担者 |
大島 義文 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (80272699)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 照射損傷 / 格子欠陥 / 原子空孔 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
原子炉・核融合炉構造材料の照射下劣化の主要因は、照射誘起格子欠陥の蓄積である。本研究では、原子空孔の反発相互作用という従来の常識に反する現象を利用して、照射による欠陥蓄積を顕著に抑制する新たな原理を確立することを目標とする。この目標を達成するためには、あらゆる種類の欠陥の生成・移動・相互作用といった挙動についての基礎的な知見が必要である。そこで先進電子顕微鏡法を駆使し、耐照射構造材料のモデル金属・合金を対象として、(I) 各種欠陥の生成・移動・相互作用についての未解明な挙動を解明し、(II) それらの知見を基にして、原子空孔の反発相互作用が点欠陥集合体蓄積過程をどのように抑制するかを明らかにすることを目的とする。 上記の研究目的を達成するために、以下の研究項目を設定した。具体的な研究項目は、以下のとおりである。(I) ① ナノサイズ欠陥の挙動、② サブナノサイズ欠陥の構造、③ 点欠陥の挙動、④ 点欠陥と転位の相互作用(転位バイアス)、⑤ 重粒子照射による初期損傷構造、(II) ⑥ 原子空孔の反発相互作用の点欠陥集合体蓄積過程への効果。これらの研究を進める上で、各種のモデル金属・合金に対し、高エネルギー電子および自己イオン照射を行う。照射装置はそれぞれ、二種類の超高圧電子顕微鏡およびイオン加速器結合型電子顕微鏡とし、照射下での欠陥挙動の動的直接観測を行う。 これらの研究項目のうち本年度は、項目①および②において顕著な成果を得た。例えば、項目①においては重要な照射誘起点欠陥集合体である転位ループの移動の活性化エネルギーを不純物の影響を取り除いて実測することに初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
設定した研究項目(① ナノサイズ欠陥の挙動、② サブナノサイズ欠陥の構造、③ 点欠陥の挙動、④ 点欠陥と転位の相互作用(転位バイアス)、⑤ 重粒子照射による初期損傷構造、⑥ 原子空孔の反発相互作用の点欠陥集合体蓄積過程への効果)のうち、初年度である本年度は研究項目①、②、③、⑤を遂行し、その全てにおいて進捗は順調であった。特に、項目①および②において顕著な成果を得た。項目①では、重要な照射誘起点欠陥集合体である転位ループの移動の活性化エネルギーを不純物の影響を取り除いて実測することに世界で初めて成功した。また項目②では、金属中の点欠陥の集合過程を直接観測することに世界で初めて成功した。特に項目②の成果は、照射損傷についての従来の描像の再構築を迫るものである。これらの成果については、現在論文投稿の準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
設定した研究項目(① ナノサイズ欠陥の挙動、② サブナノサイズ欠陥の構造、③ 点欠陥の挙動、④ 点欠陥と転位の相互作用(転位バイアス)、⑤ 重粒子照射による初期損傷構造、⑥ 原子空孔の反発相互作用の点欠陥集合体蓄積過程への効果)のうち、二年度である次年度は、本年度に特に顕著な成果のあった研究項目③に重点を置いて研究を進める。このための装置開発に、本年度予算で着手した。また並行して他の研究項目も進展させる。なお研究項目⑤で使用する国外(フランス)の実験施設については、次年度の使用申請がA評価で採択されたので、問題なく使用できる予定である。
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