研究課題/領域番号 |
15H04245
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
田中 万也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (60377992)
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研究分担者 |
大貫 敏彦 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (20354904)
山崎 信哉 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70610301)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アクチノイド / 微生物 / 生体分子 |
研究実績の概要 |
これまで微生物とアクチノイドの相互作用は核種移行の観点から主に“細胞表面”で起こる吸着や還元反応による固定について議論されることが多かった。本研究課題では、これまでほとんど注目されてこなかった微生物が放出する“細胞外”生体分子のうち錯体を形成しアクチノイドの可溶化を促進する物質、及び電子授受により還元反応を促進する物質(電子メディエーター)の二つに着目する。本研究計画の目的はこれらの物質が1)どのような微生物種により放出されるのか、2)どのような物質であるのか、そして3)アクチノイドの移行挙動にどの程度の影響を与えるのかを具体的に明らかにすることである。 前年度の結果から示唆された水溶液中における微生物由来の生体分子とTh(IV)の錯体の形成を調べるために、サイズ排除型カラムを用いたHPLC-ICP-MS分析を行った。その結果、有機物とThが同じ保持時間に検出され、水溶液中において微生物由来の有機分子とTh(IV)が結合していることが明らかとなった。また、生物性マンガン酸化物へのPu(IV)吸着実験を行った。その結果、マンガン酸化物によってPu(IV)がPu(VI)に酸化されることが示唆された。一方で、菌体のみを用いてPu(IV)吸着実験を行った場合には、Th(IV)と同様に水溶液中でPu(IV)と微生物由来の有機分子が錯体を形成していることを示唆する結果が得られた。 微生物が代謝の過程で利用するフラビン類を電子メディエーターとして、ウランへの電子供与速度を、電気化学的手法を用いて定量した。フラビン類似体3種を用いて比較したところ、標準酸化還元電位と供与速度に負の相間が見られた。また、フラビンが存在することで見かけのウラン還元電位が0.2V上昇することが分かり、嫌気状態において微生物に由来する有機物によりウラン還元反応が促進されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイズ排除型カラムを用いたICP-MS分析により、微生物由来の生体分子とTh(IV)が水溶液中で錯体を形成し安定化することを明らかにした。また、電気化学的手法を用いて、フラビンが存在することで見かけのウラン還元電位が0.2V上昇し、嫌気状態において微生物由来の有機物によりウラン還元反応が促進される可能性を示すことが出来た。以上のことから、研究計画をおおむね順調に進めることが出来たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き微生物菌体及び生物性マンガン酸化物へのTh(IV)及びPu(IV)の実験を行う。水溶液のpHや化学組成を変化させることにより、生体分子の分泌量等の応答との関係を評価する。生体内ではキノン類も酸化還元反応に関与している。前年度の結果を踏まえて本年度はアントラキノン、ナフトキノンやベンゾキノンなどのキノン類がウラン還元反応に与える寄与を明らかにする。また、キノン類は様々な誘導体が存在するため置換基依存性を検討して、ウラン還元反応との関係性を明らかにする。さらに嫌気微生物の培養実験を行い、代謝産物の中から酸化還元反応に寄与する化合物を探索、同定する。
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