研究課題/領域番号 |
15H04247
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
北辻 章浩 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (30354898)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アクチノイド化学 / 放射性廃棄物処分 / 酸化還元 / 凝集 / 電解析出 / コロイド |
研究実績の概要 |
アクチノイドの電解還元に誘起される、凝集相形成反応の研究として、電極上に析出する凝集体の成長過程を観察することを目的とし、電気化学水晶振動子マイクロバランス測定装置(EQCM)を新たに導入した。温度調節のための恒温槽等の測定環境の整備を行い、電解試験を実施した。 弱酸性溶液中のウラン(VI)イオンを電解還元し、電極上に析出する還元化学種の重量変化と電解電流の変化の相関を調べた。ウランがウラン(V)に還元される電位で電解した場合、pHが2より大きい溶液中ではウラン(V)の不析出反応が抑制されること、電解の進行により還元電流が大きくなる特異な反応が観測されること等を、これまで明らかにしてきた。EQCMによる電極上への析出反応の観察から、電極上への還元種の析出と、自触媒反応による電流の増加の時機が一致することが分かった。また、この凝集反応は、3段階の反応過程に分けられることを明らかにした。電解開始から凝集が始まるまでの誘導期の後、比較的大きな析出反応速度をもつ凝集開始期を経て、定常的に析出が生じる安定凝集過程に移行する。 電極上へ析出したウラン(IV)の再酸化反応をボルタンメトリーにより調べたところ、凝集開始過程で生成するウラン凝集体は、定常的な安定凝集過程でのそれよりも不安定であることが分かった。より高いpHの溶液では、凝集開始までの誘導期間が短く、また、両凝集過程における凝集反応速度が大きくなる。これは析出するウラン(IV)が水酸化物であることに起因すると考えられる。 本研究で電解電流の変化と電極上への析出反応を関係付けたことにより、ウラン(V)イオン還元が、電極上に析出した還元生成化学種であるウラン(IV)存在下で促進される自触媒反応であることを立証できた。また、析出物の安定状態の変化を観測することができ、今後の析出化学種の同定につながるデータを収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導入した電気化学水晶振動子マイクロバランス測定装置を用いて、電解により生成する凝集体の成長過程をリアルタイムで観測し、電解挙動との相関を調べ反応過程を明らかにするなど、当初の計画に沿った進捗状況である。また、種々の溶液条件下でのウラン凝集体の化学形態変化についてのデータを取得し、ネプツニウムの電解試験にも着手するなど、おおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
電極上のみならず、バルク溶液相での凝集微粒子をリアルタイムで観測するための装置の整備を行い、凝集粒子の生成条件と粒子径及び化学状態との相関の解明に重点を置き、ウランを始めとしたアクチノイドの原子価変化に誘起される凝集体生成の反応メカニズムを明らかにする計画である。また、プルトニウム取扱い用グローブボックスを電気化学測定に対応させるための整備を進める。
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