これまで、アクチノイドイオンの原子価変化に伴い析出する複合的な反応に着目し、電気化学水晶振動子マイクロバランス(EQCM)法などにより、弱酸性溶液中でのウランの還元反応を調べてきた。本年度は、電極表面に形成される析出物を明らかにするため、電気化学インピーダンス法を適用してウラン及びネプツニウムイオンの電解還元-析出反応を調べた。 ①ウランの電解還元-析出反応 ウラン(VI)イオンを前電解して還元し電極上に析出させた後、再酸化を防ぐため負電位を印加しながらインピーダンススペクトルを測定し析出化学種の変化を調べた。析出直後から80分後までのインピーダンススペクトルを解析して比較したところ、析出物の電気抵抗は時間経過とともに増加する結果を得た。また、結晶性が向上する特性も観測された。これらの結果から、析出化学種は時間経過とともに電気抵抗の大きい酸化物へと変化すると考察した。 ②ネプツニウムの電解還元-析出反応 ネプツニウム(VI)の電解還元では、電解還元開始後速やかに電極上への析出が観測されるが、析出物が電極を10層程度被覆すると還元電流が観測されなくなり、析出反応も停止する現象が観測された。電解電流と析出物の物質量の関係から、析出化学種は酸化物(NpO2)であることを明らかにした。電解還元により電極上に析出した化学種の電気化学特性をインピーダンススペクトル測定して調べたところ、ネプツニウムの析出物の電気抵抗は、ウランの場合に比べて15万倍大きかった。この結果から、ネプツニウムの電解還元では電極上への析出物の形成により還元反応が阻害される原因が、電気抵抗の大きな還元生成物により電極が被覆されるためであると考察した。
|