固体酸化物形燃料電池(SOFC)の大容量化に資するべく,高温領域(600-850°C)における無機材料の高電圧絶縁現象の解明を目的とした。市販のアルミナに対してPt電極やセラミックス製測定セルを適用して実験を行った。長期信頼性の確保に向け,空気または水素の加湿・無加湿4条件下で高電圧印加時の経時的なバルク絶縁特性を計測した。その結果,高純度のアルミナでは絶縁特性が向上し,特にガス中に水蒸気が含まれると変化が大きくなることがわかった。水素中では部分放電が活発になるものの,有意な絶縁性能の劣化は確認できなかった。しかしながら,実験後の試料に対する電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)での分析から,沿面方向へ電極材の拡散が生じることが判明した。また,最適な電極間距離の把握として,絶縁特性の沿面距離依存性を調査した。距離の延長に対して耐電圧などの絶縁性能が単純な比例とはならないことが認められた。さらに,温度上昇に伴い雰囲気ガスに大きく影響を受けることも明らかにした。 空間電荷による絶縁劣化メカニズムの解明にむけて,無機材料へのパルス静電応力法の適用を図った。大半の無機材料の測定では特異な電荷分布が得られ正確な校正が行えないため,昨年度に引き続きその要因を調査した。その結果,窒化ホウ素や石英ガラスなど共有結合による材料では,通常想定される分布が得られることが確認された。アルミナなどはイオン結合によって構成され,電荷担体が異なることから,電荷担体が測定に与える影響に着目した考察を進めた。当初計画では1000℃までの装置開発を行う予定であったが,入手可能な測定素子の耐熱温度が低く,パルス静電応力法での測定は600°Cまでが限界であった。これを受けてさらに高温での計測できる可能性を有するレーザ誘起圧力波法の適用を調査・検討した。
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