本年度は、マイクロ波加熱水熱合成法を用いて硝酸銅とチオ尿素、および硫酸銅とチオ硫酸ナトリウムからの化学量論組成の硫化銅(CuS)の合成条件を探索した。その結果、硝酸銅0.1 mol/Lとチオ尿素0.2 mol/Lを蒸留水に溶解させた原料溶液を、200℃で1時間、マイクロ波加熱処理を行うことで、化学量論組成のCuSを得ることが出来た。また、この材料の二次電池特性を調べたところ、集電体としてカーボンコートAl箔を用いた場合、0.1Cの条件で理論容量の約71%に相当する396 mAh/gの放電容量を得ることが出来た。しかしながら、5サイクル後の容量が、初期容量の半分程度まで減少し、サイクル特性に問題があることを明らかにした。 硫酸銅とチオ硫酸ナトリウムからのCuSのマイクロ波加熱水熱合成では、硫酸銅0.1 mol/Lとチオ硫酸ナトリウムを0.1 mol/Lを蒸留水に溶解させた原料溶液を150℃で1時間、マイクロ波加熱処理を行うことで、目的物質を合成する事ができた。また、この材料のリチウム二次電池特性を調べたところ、集電体としてカーボンコートAl箔を用いた場合、0.1Cの条件で、理論容量の約87%に相当する486 mAh/gの放電容量を得ることが出来た。さらに、集電体として銅箔を用いた場合、初期放電容量は370 mAh/gであったが、良好なサイクル特性を示した。 さらに、市販のアセチレンブラックを強酸で表面処理し親水性にし、本合成の原料溶液中にこのカーボンを添加することで、最終的にCuS/C複合体の合成も試みた。
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