研究課題/領域番号 |
15H04253
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
田中 徹 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20325591)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中間バンド型太陽電池 / マルチバンドギャップ半導体 / 光学特性 |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代の超高効率太陽電池として期待される中間バンド型太陽電池を、マルチバンドギャップ半導体ZnTeO系材料を用いて実現することを目指し、高効率化の鍵である二段階光吸収レートの増大を目的に中間バンドへの電子ドーピング効果と集光動作による入射光子数の増加効果を明らかにすること、さらに、励起キャリアの取り出し効率の増大を目的に、組成傾斜を有する構造形成に必要な混晶半導体の結晶成長を行い、その基礎物性を明らかにすることを目的としている。平成27年度は以下の知見を得た。 (1) ZnTeOへのドナー不純物のドーピングによる電子物性の制御技術の確立を目的に、分子線エピタキシー法によるZnTeO成長時にClドーピングを行い、その効果を低温フォトルミネッセンス(PL)スペクトルにより評価した。PLスペクトルを詳細に解析した結果、ドナーに関連した発光を確認することができ、添加したClがドナーとして作用している可能性があることが分かった。 (2) ZnTeO中間バンド型太陽電池の集光動作下での発電特性を評価することを目的に、集光可能なソーラーシミュレータを購入し、レンズなど光学系と既存の電気特性評価装置とを組み合わせることで、太陽電池特性の集光度及び測定温度依存性を評価可能なシステムを構築することができた。 (3) ZnCdTeO系混晶半導体の高品質結晶成長と基礎物性の解明を目的に、分子線エピタキシー法によりCdフラックス比を変化させながらZnCdTeO薄膜の成長を行った。Cdフラックスに対するZnCdTeO膜組成の変化を明らかにすると共に、光吸収特性、バンドギャップと組成の関係を明らかにした。Cd組成の変化によるバンドギャップの変化は、バンド反交差作用を考慮して求めた計算値とよく一致することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZnTeOへのClドーピングによる中間バンドへの電子ドーピングについては、添加したClがドナーとして作用している可能性を明らかにできたこと、集光下での発電特性の評価に必要なシステムを構築できたこと、ZnCdTeOについてはCdフラックスによる膜組成の制御の可能性を明らかにし、組成と各種物性の変化を把握することができたことから、当初の計画通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られた結果をもとにして、以下のように研究を進める。 (1) ドナーの形成が確認されたClドープZnTeOを用いて、中間バンド型太陽電池構造を試作し、ドーピングの有無による発電特性の変化を明らかにしようとする。 (2) 構築した集光動作下での発電特性評価システムを用いて、ZnTeO中間バンド型太陽電池の特性の評価を行う。 (3) ZnCdTeOを用いた組成傾斜を有する構造を作製し、中間バンド型太陽電池に応用することで、キャリア取り出し効率の変化を明らかにしようとする。そのため、まず構造設計と必要な組成を有するZnCdTeO成長のためのフラックス比など実験条件の設定を行う。
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