研究課題/領域番号 |
15H04254
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
平井 宏和 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70291086)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小脳 / プルキンエ細胞 / 運動学習 / バクロフェン / mGluR1 / SCA1 |
研究実績の概要 |
「バクロフェン+運動」により活性化する分子、信号伝達経路の同定 これまでの研究で生後5週以降のSCA1マウスにおいて、mGluR1シグナルが選択的に減弱していること、バクロフェン1回だけの投与で1週間にわたって運動機能が増強することを明らかにした。このメカニズムを解明するためにSCA1マウスにバクロフェンを投与、続いて運動(ロータロッド)を行わせ、3時間後に小脳組織をマイクロアレイで解析した。実験前にはmGluR1活性化に引き続き、下流シグナル分子のmRNA発現が上昇していると考えていたが、有意に変動している分子はほとんど観察されなかった。
そこで、バクロフェンによるmGluR1活性化で転写が上昇するのではなく、別のことが起こっていると推測した。mGluR1で活性化される重要な分子はPKCであるため、mGluR1活性化による運動成績の向上にPKCを介したリン酸化が重要ではないかと考えた。プルキンエ細胞にはPKCαとPKCγが発現しているが、プルキンエ細胞のPKCγが運動学習に果たす役割は知られていない。そこでPKCγが運動学習に関与しているのか、PKCγノックアウト(KO)マウスを用いて調べた。その結果、野生型マウスに比べて、KOマウスの運動学習能力が有意に劣っていた。さらにAAVベクターでPKCγをプルキンエ細胞特異的にレスキューすることで運動学習能力が回復した。以上より、mGluR1- PKCγによるリン酸化が運動機能上昇に重要である可能性が出てきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験を行う前、バクロフェンによるSCA1マウスの運動成績増強効果はmGluR1を介して核内の転写が進むと予測していた。そのため、最初期遺伝子の上昇を予想していたが、マイクロアレイ解析の結果、明らかな上昇を認めることができなかった。そこでmGluR1で活性化されるPKCによるリン酸化が運動成績増強に関与していると推測し、実験を行ったところ、仮説を支持する結果を得た。このように当初の仮説とは違っていたが、結果に基づく新しい仮説の検証を開始し、順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
プルキンエ細胞におけるmGluR1- PKCγの活性化が、どのようなメカニズムで運動機能を制御しているのか明らかにする。まず、PKCγKOマウスと野生型マウスから作成した小脳スライスをパッチクランプ解析することで、機能的にどのような違いがあるのか検証する。シナプス機能に差が見られた場合は、AAVベクターでPKCγをプルキンエ細胞特異的にレスキューすることで、シナプス機能が野生型へとレスキューされるのか確認する。続いて、プルキンエ細胞において運動機能を制御しているPKCγの基質の同定に挑戦する。
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