研究課題
本申請では、中枢回路研究のプラットフォームとしての整備が急速に進みつつあるショウジョウバエの幼虫において、オプトジェネティクスによる局所活動操作やコネクトミクス(電子顕微鏡画像3次元再構築)解析等の革新的技術を駆使することにより、定型運動の制御機構を理解することを目的とした。昨年度計画においてコネクトミクス解析等により、前運動神経細胞として仮にLPI(lateral premotor interneuron)と名付けた一群の介在神経細胞を同定した。今年度研究においては以下の実験を行い、その結果明らかとなったLPIの機能を論文として発表した(Hasegawa et al., Sci. Rep., 2016)。尚、明らかとなった機能に基づきLPIをCLI(cholinergic lateral interneuron)と改名した。①局所光刺激による機能解析:CLIは各体節に存在し同じ体節(もしくは近接する体節)の運動神経細胞をシナプス支配する。CLIの機能を調べるために、解剖した幼虫において集光したレーザー光を各体節に照射し筋収縮への影響を調べた。その結果、局所的な筋収縮が観察されたことからCLIは局所的に運動神経細胞を興奮させることが分かった。②神経伝達物質の同定:免疫組織化学法によりCLIが興奮性のアセチルコリン作動性マーカーを発現することを確認した。③ カルシウムイメージングによる活動パターンの解析:GCaMP6をレポーターとしカルシウムイメージングを行い、ぜん動運動における活動パターンを解析した。その結果、CLIの活動はぜん動運動に伴う波状の活動を示し、各体節において運動神経細胞の活動の直前に起こることを示した。本結果はCLIが各体節において運動神経細胞を活性化していることを支持するものである。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りCLI神経細胞の機能解析・活動様式解析を進め、結果を論文として発表した。
さらに別種の前運動介在神経細胞の機能解析を行う予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
The Journal of Neuroscience
巻: Feb 22;37(8) ページ: 2045-2060
10.1523/JNEUROSCI.1453-16.2017. Epub 2017 Jan 23.
Current Pharmaceutical Design
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Scientific Reports
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10.1038/srep30806.
http://bio.phys.s.u-tokyo.ac.jp/