研究課題
本申請では、中枢回路研究のプラットフォームとしての整備が急速に進みつつあるショウジョウバエの幼虫において、オプトジェネティクスによる局所活動操作やコネクトミクス(電子顕微鏡画像3次元再構築)解析等の革新的技術を駆使することにより、定型運動の制御機構を理解することを目的とした。昨年度までの計画において、運動制御に関わる新たな興奮性介在神経細胞の候補としてCDLI(cholinergic dorso-lateral interneurons)を見いだした。今年度研究においてはCDLIの機能をより詳細に調べるため以下の実験を行った。①カルシウムイメージングによる活動パターンの解析:CDLIは各体節に存在する介在神経細胞である。ぜん動運動の制御にどのように関わっているのかを探るため、カルシウムイメージングを行い、ぜん動運動における活動パターンを解析した。標本としては単離した脳神経系(脳および腹部神経節)を用い、自発的に起こるぜん動運動時(fictive movement)の神経活動を記録した。その結果、ぜん動運動の開始と同じタイミングで、体の中程の数体節において同時に活動が起こることが分かった。②コネクトミクスによる下流回路の同定:CDLI がどのような下流回路を介して運動制御に関わるのかを探るため、CDLIを起点としてコネクトミクス解析を行った。その結果、CDLIの主な下流ニューロンとして、体壁を縦に走る筋肉群(transvers muscles, TMs)を支配する運動神経細胞を阻害すると考えられるGABA作動性ニューロンを同定した。以前にテタナス毒素を用いてCDLIニューロンを阻害すると、ぜん動運動の頻度と速度が減少することが分かっている。以上の結果を合わせると、CDLIニューロンはぜん動運動の開始時に筋肉群TMsを弛緩させることで、正常な運動を制御していることが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Neuron
巻: 96 ページ: 1373~1387.e6
10.1016/j.neuron.2017.10.030
生体の科学
巻: 68(5) ページ: 478-479
http://bio.phys.s.u-tokyo.ac.jp/