研究課題/領域番号 |
15H04259
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平野 丈夫 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50181178)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シナプス可塑性 / 長期抑圧 / 長期増強 / グルタミン酸受容体 / エンドサイトーシス / エキソサイトーシス / 全反射顕微鏡 |
研究実績の概要 |
pH依存性蛍光タンパク質SEPと全反射顕微鏡を用いた実験系に、細胞外液を急速に交換できるU管システムを組み合わせることにより、培養海馬神経細胞のシナプス後部内外でAMPA型グルタミン酸受容体の個々のエンドサイトーシスを記録する方法を確立した。そして、定常時のAMPA受容体のエンドサイトーシスがクラスリンおよびダイナミンに依存しないことを見出した。つぎに、記憶・学習の細胞レベルの基盤現象の一つである長期抑圧の発現に際しての、AMPA受容体の変化を調べた。NMDAを投与することにより、長期抑圧を引き起こしたところ、NMDA投与直後にクラスリンおよびダイナミン依存性のAMPA受容体エンドサイトシスの頻度が増大することが明らかになった。しかしながら、AMPA受容体のエンドサイトーシスの頻度増加は一過性であった。一方で、NMDA投与後のシナプス後部内外でのAMPA受容体量の正確な測定も行った。その結果、長期抑圧に際して、AMPA受容体はシナプス内外で5-10分間かけて減少することが明らかになった。長期抑圧はAMPA受容体のエンドサイトーシス増強だけでは、説明できない可能性が生じたため、AMPA受容体のエキソサイトーシス変化も調べたところ、NMDA投与により、AMPA型受容体のエキソサイトーシス頻度が減少するという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
長期抑圧時におけるAMPA型グルタミン酸受容体のエキソサイトーシスおよびエンドサイトーシス変化を記録することができた。また、長期抑圧発現時のシナプス後部内外でのAMPA受容体を定量することもできた。以上のように、研究は順調に進展している。なかでも、長期増強時にAMPA受容体のエキソサイトーシスが抑えられるという知見は、これまでの通説と異なる重要な結果と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでいるので、平成28年度はAMPA受容体の各サブタイプの長期抑圧時の変化を定量的に明らかにして、論文発表することをめざす。
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