研究課題
私たちは、これまでに軸索分岐形成において低分子量GTPaseの一つRhoAが関与することを示しており(Ohnami et al., 2008)、本研究ではその上流に位置するRho-specific guanine nucleotide exchange factor (RhoGEF)のに着目し、その軸索分岐に対する作用を解明することを目指した。まず、in situ hybridizationにより発達期大脳皮質には17種類のRhoGEFが強く発現することが示された。次に、これらRhoGEFの軸索分岐作用をラット大脳皮質の2/3層水平軸索の系を用いて、in vitro切片培養下で過剰発現法により調べた。そのために、生後1日齢のラット大脳皮質より切片を作製し14日間培養した。培養4日目、エレクトロポレーション法を用いて大脳皮質2/3層の細胞に、軸索を可視化するための蛍光タンパクのプラスミド(EGFP)と各RhoGEFの発現ベクターを遺伝子導入した。その結果、6種類のRhoGEFの過剰発現により軸索分岐が顕著に増加していることがわ見出された。定量的な解析の結果、RhoGEFメンバーのABRやBCRは微細な枝分かれの形成を促進し、ARHGEF12やARHGEF18は末端での分岐形成を促進することが明らかになった。このように、複数のRhoGEFが発達期大脳皮質ニューロンに発現し、異なる様式で軸索分岐に作用することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的の一つは、大脳皮質神経回路の形成における軸索分岐の分子メカニズムを明らかにすることである。本年度は、皮質ニューロンの細胞骨格制御に関わる分子群RhoGEFが軸索分岐に関与することを示す結果が得られたことから、目的達成への大きな布石となった。
過剰発現により軸索分岐を促進することが示されたRhoGEFについて、その役割をin vivoにおける過剰発現やノックダウン法により、それらの役割を明らかにすることを計画している。さらに、それらの神経活動依存的な様相を解析し、発達期における神経回路形成における役割を解明することを目指す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Developmental Neurobiology
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http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/neurobiol/