互いに似た反応特性をもつ神経細胞が集合してできる構造であるカラムは、大脳皮質の情報処理の単位であり、その形成の過程と機構を理解することは神経科学の重要課題である。マウス大脳皮質体性感覚野(バレル野)第4層でヒゲ感覚情報を担うカラムであるバレルは、新生仔期に神経活動依存的に形成される。我々は、マウスのバレルをモデルとして、新生仔期特異的な神経活動の解析を行った。第4層細胞に子宮内電気穿孔法によりカルシウムインディケータであるGCaMPを発現させ、バレル形成中である生後5日目で二光子顕微鏡を用いて観察したところ、同じバレルに属する神経細胞同士は同期して発火するが、異なるバレルに属する神経細胞同士は同期しない傾向がみつかった。その結果として、バレル野の神経細胞がバレル毎に同期して発火するパッチワーク状の活動が検出された。また、視床皮質軸索にGCaMPを発現するトランスジェニックマウスを作製して解析したところ同様の活動がみられ、パッチワーク型自発活動は視床皮質軸索によって大脳皮質へと伝えられることがわかった。一方、バレル完成後にあたる生後11日目で解析したところ、パッチワーク型の自発活動は検出されず、第4層の神経細胞はバレルとは無関係にばらばらに発火していることが見いだされた。今回の一連の解析によって、体性感覚野の視床皮質回路が精緻化される新生仔期にのみパッチワーク型というユニークな時空間パターンをもつ自発活動が存在することが明らかになった。
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