研究課題/領域番号 |
15H04266
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古田 貴寛 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60314184)
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研究分担者 |
田中 琢真 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (40526224)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 触覚 / 情報符号化 / 末梢 / 機械受容器 / 軸索内記録 / ヒゲシステム |
研究実績の概要 |
本申請課題における平成27年度の研究では、ラットヒゲ触覚系末梢の一次求心性線維について、反応活動特性と形態学的特性の関係性を単一軸索レベルで解析した。さらに、そのようにして明らかにした末梢触覚受容器の情報符号化メカニズムについて、理論的モデルを構築し、シミュレーションで再現することによりその信憑性を高めた。これまで、視覚系や聴覚系の末梢に比べ、触覚系の末梢受容器においては、その情報符号化メカニズムについて理解が不足していた。これは、視覚系や聴覚系に比べ、触覚系では末梢のin vitro実験が困難であることや、機械的触覚入力を実験的にコントロールすることが難しいことに起因する。しかし、末梢の情報符号化メカニズムを知ることは、中枢神経系における感覚情報処理機構を理解するためには大変重要なことであり、触覚系末梢の研究は待ち望まれていた。今回明らかになった触覚情報符号化メカニズムの理解は今後の触覚情報処理研究において大変大きな貢献をするであろう。 さらに、別のテーマとしてヒゲの運動制御メカニズムを調べている。高速ビデオカメラを用いてヒゲの運動をリアルタイムで数値化し、単一の大脳皮質運動野ニューロンの活動特性を運動パターンとの関連性で明らかにした。そのように調べたニューロンの形態を可視化する方法も組み合わせ、回路構造とニューロンの活動特性の相関を調べている。 この運動制御の研究結果は、上記の触覚末梢符号化メカニズムの研究と統合的に考察することにより、アクティブタッチ(能動的触覚)の意義を合理的に説明出来る事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な目的の一つである、触覚末梢における情報符号化機構について、生理学的データと形態学的データの統合と理論的モデルによる裏付けが完成し、論文投稿まで至った。また、運動制御に関して、ヒゲ運動と大脳皮質ニューロン活動の関係性を明らかにし、その軸索投射パターンをも解明する実験についてもおおよそデータが蓄積して来ている。さらに、視床における下降性投射の機能に関する研究もデータ解析が進み、一つ目の論文の作成がほぼ完成している。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題申請書にあるとおり、包括的な実験デザインで研究を進める。特に、運動制御に関するメカニズムを明らかにする研究プロジェクトを進める。運動皮質の活動をヒゲ運動解析との関連性でキャラクタライズし、さらに単一神経細胞に対する電気穿孔法を駆使してその形態を可視化する実験計画は功を奏しており、既にデータの蓄積があるが、さらにサンプル数を増やして、その実験結果の信頼性を高める。また、別の角度から解析する手法も取り入れ、研究の厚みを補強する。
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