研究課題
本申請課題は三つのテーマを打ち立てて研究を遂行している。テーマ1について:運動制御に関連して、皮質運動野のニューロンの発火特性と回路構造の関係を明らかにした。皮質運動野ニューロンの活動をヒゲ運動との関連性において解析したところ、ヒゲ運動が大きいときに優位に活動が活発になるニューロンと、小さなヒゲ運動に連動して発火するニューロンが存在することがわかった。これらのニューロンの軸索投射パターンを単一ニューロンレベルで解析したところ、脳幹や脊髄へ同側性に投射するニューロンは両側の線条体に投射するタイプのニューロンに比べ大きい運動時を好んで発火する性質があることがわかった。こうした、運動制御に関わる回路の構造と活動特性の直接的な関係を示すデータを記載することは、今後その他の運動制御に関わる研究にために重要な基盤となる。論文の製作は完了し、投稿中である。テーマ2について:触覚情報処理系の抹消神経システムにおいて、機械刺激が神経活動に変換されるメカニズムについて、形態学的所見と生理学的所見の関係性を説明するモデルを確立した。視覚系や聴覚系に比べ、理解が遅れていた触覚系の抹消神経情報符号化メカニズムについて、考察を深める重要な所見が提供できた。論文はすでにまとめて投稿中である。テーマ3について:大脳皮質から視床への投射が、感覚入力に対する中継ニューロンの応答特性に影響を与えることを明らかにした。皮質の内的状態が、上行性の感覚情報中継ニュロンの活動を調整し、結果として皮質に到達する神経活動信号がダイナミックに変化することが示唆された。感覚情報処理において皮質視床連関の果たす役割について理解が進んだ。
2: おおむね順調に進展している
三つのテーマを掲げて研究計画を構築したが、それぞれのテーマについて、十分データが集積した。データ解析と論文作成をすでに終え、1テーマについては論文が公表された。残りのテーマについても論文投稿中である。
当初の予定通り研究計画が進んでおり、それぞれの結果が論文にまとまってきているので、今後はさらに発展的な内容に踏み込んで実験を行う。例えば運動野や上丘を破壊した場合のヒゲ運動を解析するとともに、その場合の感覚情報処理回路の活動特性を調べる。または、顔面神経の活動をブロックすることによりヒゲ運動を消失させた状態で、受動的なヒゲ刺激を入力した時、感覚情報処理回路の活動は運動皮質の活動とどのような関係になるか。あるいは、運動皮質の活動を消失させた動物に人工的なヒゲ運動を生じさせ、その時の感覚情報処理回路の活動を調べる。これらのアイデアについて、実効性を検討し、研究を発展させて進めていく。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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http://www.scholarpedia.org/article/Vibrissal_mechanoreceptors