研究課題
本研究の目的は、小脳をモデル系として、様々な種類の神経細胞およびグリア細胞がどのようにして生み出されるのか、その分子機構を明らかにすることを目的としている。2015年度は、興奮性神経細胞およびオリゴデンドロサイトについて集中的に研究したが、特に後者について論文を発表できたので、それについて紹介する。我々はマウス遺伝学を用いて、マウスの小脳オリゴデンドロサイトの95%が中脳由来であり、小脳原基由来であるのはわずか5%に過ぎないことを見いだした。またその、増殖、分化、生存に、転写因子Sox9が関与することを見いだした(Hashimoto et al, Mech Dev, 2016)。バーグマングリアを含む小脳アストロサイト系の細胞については今後も解析を続ける。
2: おおむね順調に進展している
長らく謎であった小脳オリゴデンドロサイトの起源について、区切りをつけることができた。それだけでなく、その発生と分化にSox9という転写因子が関与していることも見いだし、論文として報告した。また、小脳顆粒細胞の運命決定、増殖と分化についての研究は順調に進んでおり、現在論文投稿中である。さらに、バーグマングリアの研究も順調に進んでいる(投稿準備中)。以上から、概ね順調に進んでいると判断できる。
I 小脳興奮性神経細胞の個性獲得機構の解明プロジェクト(1)前年度までの研究で選択された候補転写因子の発現の詳細な解析。様々な発生段階の小脳原基において、どのようにその発現を変化させるのかを詳細に検討する。その発現が菱脳唇だけに留まるのか、ある特定の発生段階に留まるのか、あるいは菱脳唇から生み出された細胞でも発現が続くのか、等について調べる。(2) 上記(1)で複数の候補が得られた場合、それぞれの転写因子を子宮内エレクトロポレーション法で強制発現させ、他の転写因子の発現が抑制されるかどうかなど、転写因子間相互の遺伝子発現制御機構について調べる。II 顆粒細胞系を用いた『細胞周期の離脱と神経細胞分化』の制御機構の解明プロジェクト(1)タイムラプスイメージングを用いたGCPsの分裂と移動様式の観察。(2)GCPsの娘細胞の振る舞いに影響を与える因子の探索。(3)不均等に分配される分子の探索。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Mech Dev
巻: 140 ページ: 25-40
10.1016/j.mod.2016.02.004
PLoS One
巻: 10 ページ: e0145979
10.1371/journal.pone.0145979
Neurosci Res
巻: 105 ページ: 49-64
10.1016/j.neures.2015.09.006